この記事では、ビジネスにおけるポートフォリオの意味や役割を解説したうえで、クリエイティブ職のポートフォリオ審査における評価基準や、職種別の重要項目などをわかりやすく説明します。
ポートフォリオの事例集も紹介するので、トレンドの把握や応募者のポートフォリオを評価する際の参考にしてください。
ポートフォリオの意味
ポートフォリオの由来は、イタリア語の「Portafoglio(ポルタフォリオ)」で「札入れ」を意味します。この語源から、ポートフォリオは「書類ケース」や「作品集」など業界・分野によって異なる意味を持つようになりました。
ポートフォリオの役割
ポートフォリオは業界・分野によって用途や役割が異なります。ここではクリエイティブ業界のほかに、ビジネスで重要な以下の5つの業界・分野について説明していきます。
- クリエイティブ
- 金融
- IT
- 人事
- 教育
1.クリエイティブ
クリエイティブ業界におけるポートフォリオは、デザイナーやイラストレーター、カメラマンなどのクリエイターが自分の作品や実績をまとめたものを指します。就職活動やクライアントへのプレゼンテーションで、自分の強みや実績を効果的にアピールすることができます。
2.金融
金融業界におけるポートフォリオは、投資家が保有する金融商品の一覧や組み合わせを指します。金融商品とは株式、債券、不動産、現金などを含みます。一般的にリスク分散やリターンの最適化といった資産運用のために構築されます。
3.IT
IT業界におけるポートフォリオは、エンジニアやWebディレクターがスキルや実績をアピールするためのポートフォリオと、企業のIT資産の投資割合を管理するためのポートフォリオの2つがあります。
後者は金融業界におけるポートフォリオを応用したもので、ハードウェアやソフトウェアといった企業が保有するIT資産を、組織戦略やプロジェクトの評価結果に基づいて配分する手法です。
4.人事
人事分野におけるポートフォリオは、企業が保有する人的資本を分析して構成要素を可視化したものを指し、人材ポートフォリオと呼ばれます。
組織を構成する人材の過不足を把握し、経営戦略に沿った適切な人材配置や育成計画の立案に役立ちます。
5.教育
教育分野におけるポートフォリオは、学生の学習プロセスを可視化し、成果を保存・整理・分析するためのものを指します。
教員が生徒の学習成果を把握しやすくなり、評価やフィードバックなどの学習支援に活用できるうえ、生徒が学習の振り返りを行い今後の学習計画を立案する際に役立ちます。
クリエイティブ職のポートフォリオの基本構成
ここからは、前章で挙げた5つの業界・分野のうち、クリエイティブ職のポートフォリオについて解説していきます。まずはポートフォリオの完成度を見るために、基本的な構成要素をおさえておきましょう。
クリエイター職のポートフォリオの基本的な構成要素は以下のとおりです。これらの項目を網羅して内容を充実させているか、必要な情報を適切にレイアウトしているかといった点をみる際に参考にしてください。
1.表紙・ヘッダー | ポートフォリオのタイトルや名前を記載します。 |
2.目次・メニュー | ポートフォリオの内容を一覧にして、どのページに何が記載されているかをわかりやすく明示します。 |
3.プロフィール | 名前、生年月日、顔写真、自己紹介、経歴、スキル、使用可能なソフトウェアやツール、受賞歴、自己PRなどを簡潔にまとめます。 |
4.作品紹介 | 実績から10~20点の作品を厳選し、それぞれに以下のような情報を添えて掲載します。 ・タイトル ・クライアント名 ・制作規模 ・制作年月日 ・ターゲット ・コンセプト ・制作期間 ・作業内容 ・作品のポイント ・成果 ・使用ソフト ・開発環境 |
5.得意分野・キャリアビジョン | 得意分野やキャリアビジョンを記載することで、採用担当者がマッチ度を判断する際に役立ちます。 |
5.裏表紙・フッター | 連絡先やSNSアカウントを記載します。 |
クリエイターの得意分野がWeb領域であっても、ポートフォリオは紙媒体とデジタルの両方を用意しているのが理想です。
紙媒体であれば通信環境や採用担当者のデジタルリテラシーに左右されることなく、応募や面接、プレゼンテーションの際に、どのような状況でも素早く対応することができるからです。
そのため、紙媒体とデジタルの両方を用意する重要性を理解し、それぞれのルールに則ってクオリティの高いポートフォリオを制作しているデザイナーは、意識の高さや行動力といった点でも評価できるでしょう。
クリエイティブ職のポートフォリオの見方や審査基準
続いて、クリエイティブ職のポートフォリオの基本の見方と、審査基準となる6つの点について解説していきます。
どの観点で評価する?3つの見方
ポートフォリオをどのような観点で評価するかは、企業や採用担当者によって異なりますが、主に以下の3つの見方があります。
- 職務経歴書
- 作品集
- プレゼン資料
ポートフォリオを職務経歴書としてみるときは、作品紹介よりもプロフィールに記載された情報に着目して、応募者がどのような経験を積み、スキルを発揮してきたのか、実務につながる経験があるのかをチェックします。
ひとつの作品集としてみるなら、完成度が採用の判断材料となります。見やすさやわかりやすさに配慮して、必要な情報を適切な場所に配置し、魅力的なレイアウトになっているかも判断のポイントです。
プレゼン資料としてみる場合は、クリエイターの世界観やこだわりなど人柄を把握し、自社とのマッチ度を判断しましょう。
ポートフォリオ審査で何を見る?6つの評価基準
ポートフォリオ審査では以下の6つの要素を評価します。
- 掲載作品のクオリティ
- マッチ度
- ポートフォリオの完成度
- スキル・得意分野
- デザイン思考力
- コミュニケーション力
掲載作品をみるときは、採用後の活躍をイメージできるような、自社にマッチした作品があるかを確認することがポイントです。その際クオリティだけではなく、ポートフォリオの完成度や、スキル・得意分野も確認してください。作品とあわせて見ることで、デザイナーのスキルレベルや強み、こだわりなどを把握できます。
また、ビジネスの課題解決に、デザイナーが制作過程で使う思考プロセスを活用する企業が増えており、デザイン思考力をもつ人材が必要とされています。そのため作品紹介の解説では、完成までの過程や作品の意図が伝わるように表現されているかもポイントになります。
コミュニケーション力を評価するときは面談も実施しましょう。その際事前にポートフォリオを読み込んで、質問項目を設定しておくことが大切です。
ポートフォリオの見方や評価基準についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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職種別にみるポートフォリオの重要項目や評価のポイント
クリエイティブ職にはさまざまな職種があり、ポートフォリオの重要項目や評価のポイントも異なります。そのためここからは、主な職種を以下の5つに分けて、わかりやすく解説していきます。
- Webデザイナー
- グラフィックデザイナー
- UI/UXデザイナー・アプリデザイナー
- ゲームデザイナー・CGデザイナー
- アートディレクター・ゲームディレクター]
1.Webデザイナー
Webデザイナーのポートフォリオ審査では、ポートフォリオを一つの作品と捉えて、デザインの一貫性と美しさを評価しましょう。色彩やフォント、レイアウトに統一感があることが重要です。一貫性のある美しいデザインは印象を大きく左右します。
また、ユーザーエクスペリエンス(UX)の観点から、ユーザーがスムーズに目的の情報にたどり着けるよう、ナビゲーションが直感的で使いやすくデザインされているかを見ることも重要なポイントです。
関連記事:Webデザイナーのスキルをチェックする方法は?スキルシートの概要や見方を解説
2.グラフィックデザイナー
グラフィックデザイナーのポートフォリオ審査では、デザインのクオリティとクリエイティビティを重視しましょう。細部までこだわり作品の完成度を高めているか、独自の視点や創造的なアプローチが見られるかを評価します。
掲載されている作品のスタイルやメディアの多様性もチェックすべきポイントです。これによって、さまざまなプロジェクトに対応できる柔軟性があるかを判断します。
関連記事:グラフィックデザインとは?仕事内容や役割を含めて解説
3.UI/UXデザイナー・アプリデザイナー
ユーザーエクスペリエンス(UX)の観点から、デザインがユーザーにとって直感的で使いやすいかどうかを確認します。ナビゲーションがスムーズで、ユーザーが迷わずに目的の情報にたどり着けるかが重要です。
また、ユーザーリサーチの結果をどのようにデザインに反映させたかを評価します。ユーザーのニーズや課題を洗い出し、解決に導くデザインになっているかがポイントになります。
Figma、Sketch、Adobe XDなどのUIデザインツールの使用スキルも確認しておきましょう。プロトタイピングツールを用いてインタラクティブなプロトタイプを作成し、ユーザーテストを行う能力も評価することも重要です。
関連記事:UIデザイナーに必要なスキルとは?UXデザイナーとの違いも紹介
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【企業向け】アプリのデザイナーを探すには?おすすめ採用サービスを解説
4.ゲームデザイナー・CGデザイナー
ゲームデザイナーやCGデザイナーのポートフォリオ審査では、細部にまでこだわったデザインやリアルな表現など、クオリティと完成度の高さを重視しましょう。立体的な表現やリアルなモデリングが求められるため、デッサン力や表現力も重要です。
多様なスタイルや技術を駆使した作品があれば、幅広く高いスキルがあることを評価できます。Mayaや3ds Max、UnityAfterEffectsといった使用ツールと、各ツールのスキルレベルも確認しましょう。
5.アートディレクター・クリエイティブディレクター
ディレクター職は、プロジェクト管理能力とリーダーシップが問われます。そのため、プロジェクトの進行状況を適切に管理し、スケジュール通りに進められるかどうか、チームを効果的にリードし、メンバー間のコミュニケーションを円滑にする能力があるかを判断する必要があります。
ポートフォリオ審査では、作品のクオリティや技術的なスキルなどと同じレベルで、問題解決能力を評価することが重要です。デザインのプロセスや制作過程がしっかりと説明されているか、デザインの課題や制約に対してどのように対応したかを確認しましょう。
関連記事:アートディレクターの採用方法|仕事内容や探し方、おすすめのエージェントサービス8選も解説
クリエイティブディレクターとは?役割・仕事内容・スキルについて解説
トレンドのポートフォリオサイトがわかる事例集
ポートフォリオサイトで優れた具体例をチェックしてトレンドを把握することで、採用側が応募者のポートフォリオを評価する際も参考になります。
ここでは以下の3つの事例集を紹介します。
- STUDIO
- SANKOU!
- Wix
ポートフォリオ サイトの事例集 - STUDIO Showcase
STUDIOとは、日本発のノーコードWeb制作プラットフォームです。コードやテンプレートに縛られずに、 誰でも自由自在にデザインすることができます。STUDIO Showcaseには、STUDIOで作成された優秀なポートフォリオ サイトが掲載されています。
ポートフォリオ サイトの事例集 - STUDIO Showcase
SANKOU!ポートフォリオサイト
SANKOU!とは、Webデザインの参考になる国内のサイト集です。WebサイトやLPのトレンドをチェックすることができます。ポートフォリオサイト一覧では、ビジュアルやコンテンツが魅力的なサイトや、優れたUI/UXのサイトが集められています。
Wix ポートフォリオ作成事例
Wixとは、世界190か国で2億5000万人以上に使用されているホームページ作成プラットフォームです。プログラミングの知識がなくても、直感的な操作でサイトを構築できます。以下のサイトでは、クリエイターがWixを活用して独自の世界観を表現したポートフォリオサイトをチェックできます。
デザインを内製化するか外注するか迷ったときの判断基準
デザイナーのようなクリエイティブ職の採用の際に、社員として雇用して内製すべきか、制作会社やフリーランスに外注するか、迷ったときの判断のポイントは以下の3つです。
- コスト
- 納期
- デザイン案件の数
結論から言うと、スポットや依頼回数が少ない場合は外注、継続して依頼をする場合は内製をおすすめします。
一般的に継続的に案件がある場合、内製したほうが社内にノウハウや知見がたまり、制作の効率化も期待できるため、長期的な視点でコストを削減できる可能性があります。
しかし、定期的な案件がなく、社内で人材を雇用・育成したり設備投資費を負担したりする余裕がない場合は、外注をおすすめします。外注であれば案件ごとに支払う報酬のみで済むため、結果的にコスト削減につながります。
また、社内の人材にスキルがないとクライアントの要望に対応できず、進行が滞る場合がありますが、スキルの高い人材に外注して社内の人材はコア業務に集中すれば、効率良く業務を進められるでしょう。
以下の資料では、デザインのリソースを確保する二つの手法として、外注と採用について比較しながらご紹介しています。無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
関連記事:
デザイン外注と内製のメリット/デメリットは? 判断すべきポイントも解説
デザインを外注する際にフリーランスをおすすめする3つの理由
デザインなどをクリエイティブ職に外注する際は、フリーランスをおすすめします。主な理由は以下の3つです。
- コストが抑えられる
- 迅速で柔軟な対応が可能
- 専門性・クオリティが高い
一般的に制作会社よりもフリーランスに依頼するほうが、外注費を抑えられる傾向があります。そのため予算が少ない場合でも依頼することが可能です。
そのうえ、フリーランスであれば直接コミュニケーションを取ることができ、情報伝達がスムーズです。問題が発生した際も連絡を取りやすく、迅速で柔軟な対応が期待できます。
また、フリーランスの多くは、制作会社やデザイン事務所で経験を積んでから独立・開業しています。スキルや実績のある人材に依頼すれば、クオリティの高い制作物を期待できるでしょう。
関連記事:
グラフィックデザインの外注依頼にフリーランスがおすすめな理由と人材サービス8選を解説
グラフィックデザインを外注するなら制作会社?フリーランスと比較して解説
スキルと実績のあるデザイナーに依頼するならクロスデザイナーがおすすめ
本記事では、ビジネスにおけるポートフォリオの意味や役割を解説したうえで、クリエイティブ職のポートフォリオ審査における評価基準や、職種別の重要項目などを詳細に説明しました。ポートフォリオの事例集も紹介しているので、トレンドの把握や応募者のポートフォリオを評価する際の参考にしてください。
社員を雇用して内製すべきか、制作会社やフリーランスに外注するか迷ったときの判断のポイントは「コスト」「納期」「デザイン案件の数」ですが、スポットや依頼回数が少ない場合は外注がおすすめです。
その際、クリエイティブ職はフリーランスが多く、企業で働きながら副業をしている人もいるため、制作会社ではなくフリーランスに外注するのも一つの手です。スキルと実績のあるフリーランスデザイナーに依頼すれば、制作会社よりコストを抑えてクオリティの高い制作物を完成させることができるうえ、進行中は直接コミュニケーションを取れるため迅速で柔軟な対応が期待できます。
デザインをはじめとする専門性が高い領域の仕事を、フリーランスに依頼することに慣れていない企業は、デザインの知識やスキル、費用相場について熟知した、実績と信頼のあるデザイナー専門のエージェントサービスに依頼すれば、業界に詳しく安心して任せられるでしょう。
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- クロスデザイナーの特徴
- クロスデザイナーに登録しているデザイナー参考例
- 各サービスプラン概要
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