準委任契約での時間精算は、法律の解釈や適用方法によっては、違法とされるケースもあります。しかし、適切な労務管理を行うことで、リスクを最小限に抑えることが可能です。
具体的には、契約内容の明確化や労働時間の正確な記録、そして定期的な見直しが必要です。これらの対策を講じることで、企業と従業員双方にとって公正な環境を築くことができるでしょう。
そこで今回は、準委任契約の時間精算が違法かどうかについて、適切な労務管理のやり方と注意点を解説します。ぜひ参考にしてください。
準委任契約とは?基本的な概念と特徴を解説
準委任契約とは、特定の業務を遂行するための契約形態であり、業務の結果に対して完成の義務を負いません。これは、原則として業務の遂行自体が目的であり、成果物の完成を必ずしも求めないからです。
そのため、準委任契約の報酬形態は、主に「成果完成型(成果物が対象)」と「履行割合型(時間や工数が対象)」の2種類に分けられます。
なお、履行割合型と成果完成型の違いについては、以下の記事をご参照ください。
準委任契約の特徴
上記のように、準委任契約の目的は業務の遂行であるため、業務の内容や範囲が変動する場合にも柔軟に対応しやすいのがメリットです。一方、委託先に対して指揮命令権がないため、業務の進捗や労務管理が難しいというデメリットがあります。
関連記事:準委任契約とは? 請負契約との違いやメリット・デメリット、注意点を解説
準委任契約のメリットとデメリットを比較
以下では、準委任契約のメリットとデメリットを一覧で比較します。
メリット | デメリット | |
柔軟性 | 業務内容の変更に対して契約内容も変更しやすく、柔軟に対応できる | 業務の進捗や労務管理が難しい |
専門性 | 専門的な知識やスキルを持つ人材を活用できる | 長期的な関係構築が難しく、社内にノウハウを構築しにくい |
コスト | 必要な期間だけ人材を確保できるため、コストの削減や効率化が可能 | 業務の質や成果が一定でない場合がある |
契約期間 | 契約期間の制限がないため、プロジェクトの進行に合わせて調整可能 | 契約内容の曖昧さがトラブルの原因になることがある |
準委任契約の具体的な適用事例
以下は、準委任契約の具体的な適用事例です。それぞれ解説します。
フリーランスデザイナーの事例
フリーランスデザイナーがクライアントの広告やWebサイトの改修を行う場合、準委任契約が適しています。この契約形態では、デザイナーはクライアントの指示に基づいてデザイン作業を行いますが、最終的な成果物の完成を保証する義務はありません。
準委任契約を結ぶことで、デザイナーは柔軟に作業を進めることができ、クライアントも必要に応じてデザインの方向性を変更することが可能です。
ITコンサルタントの事例
ITコンサルタントが企業のシステム導入や改善に関するアドバイスを提供する場合も、準委任契約が適しています。コンサルタントは、企業のニーズに応じて適切なソリューションを提案し、実行支援を行いますが、特定の成果物の完成を求められるわけではありません。
準委任契約を結ぶことで、企業はプロジェクトの進行に合わせて柔軟に対応でき、コンサルタントも専門知識を活かした最適なアドバイスを提供できます。
システム保守・運用の事例
システムの保守・運用業務にも、準委任契約が適しています。例えば、企業のITシステムの運用・保守を外部の専門業者に委託する場合、業者はシステムの安定稼働を維持するための作業を行いますが、特定の成果物の完成を求められるわけではありません。
準委任契約を結ぶことで、企業はシステムの安定運用を確保しつつ、業者は専門知識を活かした適切なサポートを提供できます。
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時間精算の仕組みとは?準委任契約の適用事例
時間精算とは、業務委託契約(ここでは準委任契約)において、実際に働いた時間に基づいて報酬を計算する方法です。
通常は、月間の稼働時間の上限と下限を設定し、その範囲内であれば固定の報酬が支払われます。例えば、月間の稼働時間が140時間から180時間の間であれば、契約金額が満額支給されます。
もし稼働時間がこの範囲を超えたり下回ったりした場合には、超過分や不足分に応じて報酬が調整される仕組みです。
準委任契約における時間精算の適用事例
以下では、準委任契約の時間精算の適用事例を、上記をもとに解説します。
職種 | 適用する際のポイント |
フリーランスデザイナー | デザイン作業の時間を月単位で計測し、140~160時間の範囲内で精算する。範囲を超えた場合は追加料金を支払う。 |
ITコンサルタント | コンサルティング業務の時間を週単位で計測し、40~50時間の範囲内で精算。範囲を超えた場合は追加料金を支払う。 |
システム保守・運用 | システムの保守・運用作業の時間を月単位で計測し、160~200時間の範囲内で精算。範囲を超えた場合は追加料金を支払う。 |
なお、上記の時間の単位や範囲はあくまでも参考事例として考え、実際には契約内容によって調整してください。
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準委任契約の時間精算は違法か?法的な観点から解説
準委任契約では、時間精算が違法となるケースと適法となるケースがあるため、十分な注意が必要です。そこで以下では、それぞれのケースを詳しく解説します。
準委任契約の時間精算が違法となる場合
準委任契約における時間精算が違法とされる場合は、以下のような状況が該当します。
- 指揮命令権を行使した場合
- 業務工数や作業時間に基づいて報酬を支払った場合
- 偽装請負を行った場合
それぞれ解説します。
指揮命令権を行使した場合
委託者が受託者に対して具体的な作業指示や管理を行った場合には、労働契約とみなされる可能性があります。労働契約とみなされた場合は、労働基準法の適用を受けることとなり、最低賃金の遵守や残業代の支払いが必要となります。
業務工数や作業時間に基づいて報酬を支払った場合
委託者が受託者の業務工数や作業時間を指定し、それに基づいて報酬を支払う場合も労働契約とみなされ、労働基準法違反となる可能性があります。
偽装請負を行った場合
準委任契約を交わしているにもかかわらず、実際には派遣や労働者供給と同じような関係性が生じている場合には、偽装請負とみなされる恐れがあります。
関連記事:偽装請負とは?禁止事項や判断基準、問題点や罰則などを事例とともに解説
準委任契約の時間精算が適法となる場合
準委任契約における時間精算が適法とされる場合は、以下の条件を満たす必要があります。
- 契約内容を明記する
- 指揮命令権を行使しない
- 労働者性を回避する
それぞれ解説します。
契約内容を明記する
契約書に時間精算の方法や条件を明確に記載することが重要です。契約内容を明確にすることで、双方の認識を一致させ、トラブルを防ぐことが可能です。
指揮命令権を行使しない
委託者が受託者に対して具体的な指揮命令を行わないことが重要です。指揮命令があると労働契約とみなされる可能性があるため、受託者の自主性を尊重することが大切です。
労働者性を回避する
受託者が労働者とみなされないように、業務の遂行方法や時間管理については受託者の裁量に任せることが重要です。労働者性が認められると、労働基準法の適用を受ける可能性があります。
関連記事:どこまでの指示が偽装請負になる?業務委託契約との関係性まで解説
適切な労務管理の方法|時間精算を正しく行うためのポイント
以下では、準委任契約における適切な労務管理の方法と、時間精算を正しく行うためのポイントを解説します。
準委任契約における労務管理のポイント
準委任契約における労務管理のポイントは、次の3つです。
指揮命令権を行使しないこと
準委任契約では、受託者が自主的に業務を遂行できることが重要です。委託者が具体的な作業指示や管理を行うと、労働契約とみなされるリスクがあります。これを避けるためには、受託者に対して業務の大まかな方向性や目標を示すにとどめ、具体的な指示は控えるようにしましょう。
勤務時間や場所を指定しないこと
受託者の勤務時間や場所を指定すると、労働契約とみなされる可能性があります。受託者が自由に働ける時間と場所を選べるようにすることで、準委任契約の適法性を保つことができます。例えば、リモートワークやフレックスタイム制を導入することで、受託者の自主性を尊重することが大切です。
勤怠管理を適切に行うこと
受託者の勤怠管理を適切に行うことは、報酬の正確な計算やトラブル防止に役立ちます。労働時間の記録を正確に行い、その記録に基づいて報酬を支払うことで、透明性を確保できます。
ただし、労働時間を指定することは偽装請負となる可能性があるため、あくまでも「正確な労働時間を把握する」ことが目的であることを忘れないようにしましょう。例えば、タイムシートや勤怠管理システムを利用して、受託者の労働時間を正確に把握するのがおすすめです。
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準委任契約における時間精算のポイント
準委任契約における時間精算のポイントは「精算幅を設定すること」と「契約内容を明確化すること」の2つです。
精算幅とは、例えば月間140時間から180時間のように、報酬が固定される稼働時間の範囲を指します。この範囲内であれば、契約金額を満額支払います。精算幅を設定することで、予算管理がしやすくなり、双方の期待値を明確にすることが可能です。
また、契約内容を明確化することも重要です。契約書には、業務内容や報酬の計算方法、精算幅などを明確に記載しましょう。契約内容を契約書に明記することで、双方の認識のズレを防ぎ、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
具体的には、以下の点を明確にすることが重要です。
- 業務の範囲と内容
- 報酬の計算方法
- 精算幅とその超過・不足時の対応
- 契約期間と更新条件
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準委任契約における契約書作成の重要性
準委任契約における契約書作成の重要性について、以下の観点からそれぞれ解説します。
法的リスクを回避できる
契約書を作成することで、契約の内容や条件が明確になります。契約書の作成は、後々の法的な紛争を避けるための証拠として機能する重要な要素です。
例えば、業務の範囲や報酬の支払い条件などが明記されていれば、双方が合意した内容に基づいて行動することが求められ、法的リスクを最小限に抑えることが可能です。
トラブルを回避できる
契約書には、業務の詳細や責任範囲、期限などが具体的に記載されます。契約書の内容を理解することで、双方の誤解や認識のズレを防ぎ、トラブルの発生を未然に防ぐことが可能です。
例えば、業務の進行中に発生する可能性のある問題や変更についても、契約書に記載しておくことで、スムーズな対応が可能となります。
信頼関係を構築できる
契約書を作成することは、双方の信頼関係を築くための重要なステップです。明確な契約書があることで、双方が合意した内容に基づいて業務を進めることができ、信頼関係が強化されます。また、契約書があることで、双方が責任を持って業務を遂行する姿勢を示すことができ、長期的な協力関係の構築にも寄与するでしょう。
なお、契約書の詳しい内容や作成方法は、以下の記事をご参照ください。
関連記事:業務委託契約書の重要性と作成方法、記載すべき項目や注意点を解説【テンプレ付き】
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Workship MAGAZINE編集部。フリーランス、マーケティング、会計経理、経営分野が専門。個人事業主としてスポーツインストラクター、飲食店経営、飲食コンサルを経て、現在はコンテンツ制作会社を経営中。
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