世界のメタバース市場は急速に拡大しており、今後の成長を見込んでメタバース市場へ参入する企業が相次いでいます。
この記事では、メタバースの概要や関連用語から、メタバースデザイナーに必要なスキルや使用するツールまで、メタバースのデザインを依頼する際に企業側が理解しておきたい基礎知識について解説します。
メタバースデザインの依頼先やデザイナーの探し方も紹介するので、メタバース事業の展開を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
メタバースとは
メタバースとは、「meta(超越した)」と「universe(世界)」を合成した言葉で、インターネットなどのネットワークを通じてアクセスする仮想的なデジタル空間を指します。2021年に「Facebook」がメタバース事業に注力するとして、社名を「Meta Platforms」に変更したことにより、世界的にメタバースが注目を集めるようになったとされています。世界のメタバース市場は、2030年には2021年の約17倍の6,788 億米ドルもの規模になり、日本市場でも2025 年に4兆円、2030 年に24兆円に達すると予測されています。
また、メタバースについてはさまざまな定義が提唱されていますが、総務省の「令和5年版 情報通信白書」によると、主に以下の1から4の特徴を備えた仮想空間であるとされています。
- 利用目的に応じた臨場感・再現性がある
- 自己投射性・没入感がある
- リアルタイムにインタラクティブである
- 誰もが仮想世界に参加できる
それぞれ詳しく説明します。
1.利用目的に応じた臨場感・再現性がある
メタバースは、どのように活用するかという利用目的に応じて、主に視覚や聴覚に重点を置いて現実の臨場感を再現したものであるとされています。この仮想空間は、デジタルツインと同様に現実世界を再現する場合もあれば、簡略化された現実世界のモデルを構築する場合、物理法則も含め異なる世界を構築する場合もあります。このデジタルツインについては、次章で詳しく解説します。
2.自己投射性・没入感がある
自己投射性とはVRの要素のひとつで、生成された仮想世界が自然な3D空間を構成しており、使用している人間と環境がシームレスになってその環境に入り込んだ状態です。メタバースは、アバターを介して自己投射性を実現し、仮想世界に入り込んでいる感覚が得られることが重要な要素とされています。
3.インタラクティブである
インタラクティブとは、英語の「interactive」が語源で直訳すると「相互作用」という意味です。メタバースは多くの場合、リアルとバーチャルに影響しユーザー同士の相互作用が可能であり、すなわちリアルタイムにインタラクティブであること定義されています。
4.誰もが仮想世界に参加できる
メタバースは、3次元の仮想空間として構築され、VRデバイスを必須とする場合が多いですが、スマホなど身近なデバイスで利用可能であったり、ビジネス向けに2次元で構築されていたりする場合もあります。そのように多様な人々が参加可能なオープン性を備えていることも、メタバースの重要な要素です。
参考:総務省 情報通信政策研究所調査研究部「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会 報告書 」
総務省「令和5年版 情報通信白書:メタバース」
おさえておきたいメタバース関連用語
続いて以下の図でメタバースの概念を把握しておきましょう。
ここからは、メタバースに関連する基本的な用語について説明します。メタバースを活用した新規事業や、メタバースの制作・開発を検討している方はぜひ理解しておくことがおすすめです。
プラットフォーム
メタバースを構築し利用するための基盤をプラットフォームと言い、プラットフォームを提供する事業者をプラットフォーマーと呼びます。プラットフォームは数多く存在しており、その特徴は以下のように多岐に渡ります。
- メタバースを構築するための機能や素材、ルールなどを提供するもの。
- ユーザーの認証・管理やアイテムなどの管理、コミュニケーション機能、契約・取引などの基盤的サービスを提供するもの。
- メタバースの基本的なサービス自体を運営・提供し容易に利用可能にするもの。
ワールド(バース)
ワールドとは、プラットフォーム上で構築・運用されるメタバースの世界を指します。ワールド間の移動は可能な場合と不可能な場合があります。
ワールド提供事業者
ワールド提供事業者とは、プラットフォーマーと契約し、プラットフォーム上にワールドを構築して提供する事業者を指します。プラットフォーマー自身がワールドを構築して提供するケースもあります。
ユーザー
一般的にメタバースでユーザーと言った場合は個人のエンドユーザーを指し、法人向けのバーチャルオフィスやデジタルツインを利用する場合はビジネスユーザーと呼ばれます。
世界のメタバース市場は急速に増加しており、2022年に年間約2億人であったユーザー数が2030年には約7億人まで拡大し、日本でも約1,750万人に達すると予測されています。
アバター
アバターとは、英語の「avatar」が語源で直訳すると「化身」という意味で、仮想空間でユーザーの分身としてアイデンティティを表現するものです。アバターの外見や属性などについては、現実世界のユーザー自身をアバターに反映させることもあれば、現実世界とは異なることもあります。
また、アバターとユーザーの関係については、アバターと特定の個人1人が対応しているケースのほか、複数の個人が1つのアバターを共有したり、組織や法人が1つのアバターを操作したり、さまざまなケースがあります。
アセット
アセットとは、3DCGやゲームを開発するときに使う画像や3Dモデルデータ、音声データなどの素材や、作品に必要な素材一式のことです。
エフェクト
エフェクトとは、音声や画像・映像などに加工を施して必要な効果を追加することです。エフェクトデザインによって3DCGをリアルに演出します。
デジタルツイン
デジタルツインとは、現実世界にある製品やサービスといった対象物の情報を取得して、対になる物をデジタル空間に再現することを言います。デジタル空間で対象物のモニタリングやシミュレーションを行うことを可能にする技術で、問題点の調査やサービスの向上などに活用されています。
参考:総務省 情報通信政策研究所調査研究部「事務局資料」(2023年10月24日)
総務省 情報通信政策研究所調査研究部「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会 報告書 」
メタバースデザイナーとは
メタバースの制作に関わるデザイナーは、3DCGデザイナーとUI/UXデザイナーの大きく2種類に分けられます。自社のニーズに合ったメタバースデザイナーを選定するには、これら2つの職種の役割や特徴を理解しておくことが重要です。
3DCGデザイナー
3DCGデザイナーの役割は、メタバース空間やアバター、背景、建物、自然物などのプロップなどのデザインです。
3DCGデザインは、モデリング・テクスチャ・リギング・モーション・エフェクトといった複雑な工程を経て制作します。そのため同じ3DCGデザイナーでも、全工程を担えるジェネラリストと呼ばれる人と、各工程に特化したスペシャリストとして活躍する人に分かれます。
3DCGデザイナーの採用にあたって、専門性や得意分野の違いによるミスマッチを防ぐためには、事前に依頼したい業務内容や作業工程を明確にしておき、要望をできるだけ詳細に伝えることが大切です。
3Dデザインの具体的な作業工程とその工程を専門に携わる3Dデザイナーの呼称、仕事内容について理解を深めたい方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
関連記事:3Dデザイナーとは?仕事内容やスキル、需要の変化について解説
UI/UXデザイナー
UI/UXデザイナーは、メタバース上での操作や体験を設計する役割を担います。利便性や快適性を重視したUI/UXのデザイン・設計により、ユーザーがサービスを通じて得る体験において、使いやすさ・楽しさ・満足感を向上させることを目的としています。
UIデザイナーやUXデザイナーの違いを把握し、それぞれの仕事内容や業務の流れについて理解を深めたい方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
関連記事:UIデザイナーとは? 仕事内容やスキルについても解説
UXデザイナーとは? 仕事内容やスキルについても解説
メタバースデザイナーに求められるスキル
メタバースデザイナーにはさまざまなスキルが求められますが、大きく以下の3つに分けられます。
- メタバースの知識
- デジタルスキル
- ビジネススキル
採用する企業側はこれらのスキルを評価ポイントに設定し、人材を見極める際に役立てましょう。
1.メタバースの知識
メタバースデザイナーは、メタバースの世界を構築するために、基本的な概念や仕組みを理解している必要があります。これには、仮想空間やアバター、VR/AR技術、ブロックチェーン、UI/UXなども含まれます。また、メタバースの歴史や市場規模、トレンド、未来予測について把握していることも重要です。
2.デジタルスキル
メタバース制作に不可欠な3DCGデザインには、モデリング・テクスチャ・リギング・モーション・エフェクトなどのスキルが必要です。Maya、Blender、3ds Maxといった3DCGソフトウェアを使いこなし、メタバース空間やアバターをデザインできる能力が求められます。また、VRアクセシビリティやUI/UXの設計に関する知識とスキルも必要です。これらのスキルを証明する資格については、後ほど詳しく説明します。
3.ビジネススキル
メタバースデザイナーは単なるクリエイターではなく、クライアントやチームとビジネスの一環としてメタバースを活用するために重要な役割を果たします。そのため、プレゼンテーション力、プロジェクトマネジメント力、クライアントコミュニケーションなどのビジネススキルが必要です。また、市場動向やユーザーニーズを理解し、ユーザー体験を最適化するマーケティングの視点も求められます。
メタバースデザイナーが使う主なツール
ここで、メタバースデザイナーが使うツールから、代表的な5つのソフトウェアを紹介します。
- Maya
- Blender
- 3ds MAX
- Figma
- Sketch
最適なツールはプロジェクトの要件によって異なるため、メタバースを活用する目的や用途を明確にしておき、採用候補者が使用可能なツールとプロジェクトに適したツールが一致しているかを確認しましょう。
1.Maya
Mayaは3D アニメーションとビジュアルエフェクトのソフトウェアです。強力なアニメーションツールや直感的なモデリングツールが搭載されたプロ向けのハイエンドツールで、リ
アルなキャラクターや映画並みのエフェクトが作成できる点が特徴です。
参考:Maya
2.Blender
Blenderは無料で利用できるオープンソースの3Dモデリングツールでありながら、有料のツールに引けを取らない多機能な点が特徴です。モデリング、アニメーション制作、レンダリングなどの工程をワンストップで行えるため使い勝手が良く、多くのユーザーに支持されています。
参考:Blender
3.3ds MAX
3ds MAXは圧倒的な3Dモデリングとレンダリングで、広がりのある世界観と高品質なデザインが実現できるソフトウェアです。アニメーション系のプラグインが多い点が特徴で、アニメ制作会社では主流となっています。建築業界でのシェアも大きく、CADとの連携が得意な点も特徴です。
参考:3ds MAX
4.Figma
Figmaは世界中で高い支持を得ているUI/UXデザインツールです。2023年に実施された海外のUI/UXデザインツールに関する調査結果では、以下のように他のツールを圧倒しています。
Figmaはチームでの共同作業に優れており、場所を選ばずにブラウザ上でいつでも作業でき動作が軽く、複数名で同時に共同編集が可能といった多くの特長を備えています。そのうえ無料で基本的な機能が使えるため、コストを抑えて作業を効率化させることが可能です。
参考:Figma
5.Sketch
SketchはMac用のベクターグラフィックスエディタです。コラボレーション機能によりデザインの共有が簡単に行える点や、プロトタイプの実機確認が迅速に行える点が特長です。
ただし、Windowsに対応しておらず、Adobe製品との互換性が限定的な点がデメリットとして挙げられます。
参考:Sketch
関連記事:デザインツールの種類とは?最新トレンドや案件獲得におすすめのツールを紹介
メタバースデザイナーのスキルを証明する資格
メタバースデザイナーの知識やスキルを証明できる資格は、主に以下の3つです。採用候補者のスキルを見極める際に参考にしてください。
- CGクリエイター検定
- CGエンジニア検定
- Unity認定試験
それぞれ詳しく説明します。
1.CGクリエイター検定
CGクリエイター検定は、デザイン・2DCGの基礎から、映像制作・3DCG制作の基本的な手法や流れまで、 CGで表現するために必要なさまざまな知識を測る検定です。レベルは「ベーシック」と「エキスパート」の2つがあり、ベーシックでは基礎知識の理解を測り、エキスパートでは専門知識の理解と知識を応用する能力を測ります。難易度の高いエキスパートは、2023年度後期の検定結果から合格率がわずか21.2%であったことが明らかになっており、高いスキルを持つ証明になるでしょう。
参考:CGクリエイター検定
CG-ARTS検定┃検定試験 応募者数と合格率
2.CGエンジニア検定
CGエンジニア検定は、アニメーションやゲーム、VR・ARなどの開発やカスタマイズに関する知識を測る検定です。レベルはCGクリエイター検定と同じく「ベーシック」と「エキスパート」の2つがあります。2023年度後期の検定結果では、エキスパートの合格率は33.2%となっており、こちらも難易度の高い資格であることが分かります。
参考:CGエンジニア検定
3.Unity認定試験
「Unity Technologies」が開発したリアルタイム3Dコンテンツを制作・運用するためのプラットフォーム「Unity」に関するスキルの習熟度を証明する資格です。レベルは「ユーザー」「アソシエイト」「プロフェッショナル」の3つに分かれています。Unityのスキルと指導の両面で優れた能力を持つリーダーを認定する「公認インストラクター・プログラム」もあります。
参考:Unity認定試験
メタバース関連のデザインの依頼先
メタバースデザイナーのような高度なデザイン人材の採用や育成を強化するには、時間やコストがかかります。人件費や設備費がかかるのはもちろんのこと、育成に関わるメンバーのタスクと工数が変わるため、他の業務やプロジェクトに影響する可能性もあります。
そのため社内のリソースに余裕がない場合は、デザインを外注してノウハウを蓄積するのも1つの手です。
メタバース関連のデザインの依頼先としては、主に以下の2つが挙げられます。
- メタバース制作・関連企業
- フリーランス
それぞれ詳しく説明します。
1.メタバース制作・開発企業
メタバース制作・開発の実績がある企業に依頼するメリットは、メタバースを初めて活用する企業でも安心してプロジェクトを進められるようサポート体制が整っている点です。ただし、どのような事業展開をしたいのか、目的によって必要な機能や表現方法が異なり、初期費用や制作期間が変動する可能性があるため注意しましょう。
メタバースの導入を成功させるためには、プロジェクトの目的・用途・予算などを事前に明確にしておき、自社のプロジェクトに適した依頼先を選定して、要望をできるだけ詳細に伝えることが重要です。
2.フリーランス
フリーランスに依頼するメリットは、メタバースのデザインに特化したスキルと知識を持っており、最新のトレンドや技術に詳しいうえ、プロジェクトの要件に対して柔軟な対応が可能な点です。企業に依頼するよりも予算を抑えつつ、高品質で効率的なメタバース制作をサポートしてくれるでしょう。
一方、プロジェクトの途中で辞めてしまう可能性があり、リスクを回避するためには円滑なコミュニケーションを確保する必要があります。また、フリーランスは一人で作業するケースが多く、大規模で複雑な要件のプロジェクトを担うには限界があるでしょう。
そのため、メタバースの開発をフリーランスに依頼する際は、知識やスキルのほかコミュニケーション力や信頼性についても慎重に評価することが重要です。
フリーランスのメタバースデザイナーの探し方
フリーランスのデザイナーを探す方法は、主に以下の3つが挙げられます。
- 人材エージェント
- ダイレクトリクルーティング
- リファラル採用
1.人材エージェント
エージェントサービスは、企業ごとに担当者が付いてニーズに合った適切な人材を紹介するというものです。
メリットは、エージェントの審査を経た専門的スキルを持つ人材が登録されており、優秀な人材を見つけやすく採用工数の削減につながることが挙げられます。また、採用後の契約書作成や契約締結などにおいてもサポートを受けられるため、フリーランスへの業務委託に慣れていない企業にとってはおすすめです。
デメリットは、利用料が発生することです。利用料は、人材を採用して案件を獲得した際に発生するケースが多く、報酬をフリーランスに手渡すタイミングで、何割かをエージェントが受け取ります。
2.ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、企業側が採用したい人材へ直接スカウトを行い、能動的に採用活動を実行する方法です。求人サイトなどに募集を出して待つスタイルではなく、企業側で選考人数を調整できるため、採用コストを抑えることができます。
ただし、登録内容だけではスキルの判断が難しく、採用候補者とのコミュニケーション回数が多くなると採用工数がかさむ場合がある点がデメリットです。
3.リファラル採用
リファラル採用とは、SNSなどを活用して自社の社員から友人や知人を紹介してもらう採用手法です。欧米で広く取り入れられている手段で、日本でもベンチャー企業を中心に導入が進んでいます。
社風や事業への理解がある社員からの紹介により、採用のミスマッチが起こりにくく入社後のギャップを軽減が軽減できる点と、コストが抑えられる点がメリットです。
ただし採用までの時間がかかる場合があり、急ぎの場合や複数人採用する場合には不向きな手法です。
メタバースに関連するデザインの依頼先をお探しならクロスデザイナーがおすすめ
本記事では、メタバースの概要や関連用語について説明したうえで、メタバースデザイナーに必要なスキルや使用するツールなど、デザインを依頼するために理解しておきたい基礎知識について詳細に解説しました。
メタバース関連のデザインを外注する際の主な依頼先には、メタバース制作・開発企業とフリーランスの2つがあります。メタバース制作・開発企業に依頼すれば、メタバースを初めて活用する企業でも安心してプロジェクトを進められるようサポートが受けられるでしょう。ただし、どのような事業展開をしたいのか、目的によって必要な機能や表現方法が異なり、初期費用や制作期間が変動する可能性があるため注意が必要です。そのため、予算を抑えたい場合や柔軟な対応を求めたい場合はフリーランスへの依頼がおすすめです。
フリーランスのデザイナーに依頼する場合は、デザインの知識やスキル、費用相場について熟知した、実績と信頼のあるデザイナー専門のエージェントサービスに依頼すれば、業界に詳しく安心して任せられるでしょう。対象となる企業に必要なリソースを選んでマッチングしてくれるため、ミスマッチのリスクを軽減できます。
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