この記事では、メタバースの基礎知識を解説したうえで、メタバース制作に関わる3DCGデザイナーの仕事内容や必要なスキルなど、メタバース開発を検討する企業側が理解しておきたいことを説明します。
3DCGデザイナーの採用方法やおすすめの探し方も紹介するので参考にしてください。
メタバースの基礎知識
メタバースの定義や解釈はさまざまですが、ここでは総務省の「情報通信白書 令和5年版」をもとに解説していきます。
メタバースとは、インターネットなどのネットワークを通じてアクセスする仮想的なデジタル空間で、主に以下の1~4の特徴を備えている仮想空間を指します。
- 利用目的に応じた臨場感・再現性がある
- 自己投射性・没入感がある
- リアルタイムにインタラクティブである
- 誰もが参加できる
ユーザー同士のコミュニケーションが可能で、メタバース上での経済活動も注目を集めています。日本のメタバース市場は成長傾向にあり、以下の表のとおり、2026年度には1兆円を突破すると予測されています。
【図表4-7-5-4 日本のメタバース市場規模(売上高)の推移と予測】
この急激な成長は、コロナ以降、仮想空間を利用したバーチャル展示会、オンラインイベントや教育・トレーニング、インターネット通販での接客やショッピング体験など、さまざまな用途で利用が拡大していることが要因とされています。
2Dメタバースと3Dメタバースの違い
メタバースは多くの場合、3次元の仮想空間として構築され、VRデバイスを必須としますが、スマホなど身近なデバイスで利用可能であったり、ビジネス向けに2次元で構築されていたりする場合もあります。
2Dメタバースと3Dメタバースの主な違いは以下のとおりです。
2Dメタバース | 3Dメタバース | |
特徴 | ・平面的である。 ・導入コストが抑えられる。 ・手軽さとアクセシビリティに優れている ・没入感は3Dメタバースに比べて低め | ・立体的である。 ・リアルな没入感と高度なインタラクティビティ。 |
デバイス・操作性 | ・PCやスマホからアクセスできる ・操作が簡単で、多くのユーザーが手軽に利用できる | ・VRヘッドセットや高性能なPCなど専用のハードウェアが必要な場合がある |
コミュニケーション | ・テキストチャットや絵文字など、主に画像やテキストを通じて情報を伝える | ・実際の現実空間に近い感覚でコミュニケーションできる |
2Dメタバースと3Dメタバースの違いは、メタバースオフィスの具体例を見るとよりわかりやすいでしょう。
2Dは「oVice」「VoicePing」「Gather」などが代表的で、アクセシビリティに優れ、テレワークなどにおけるコミュニケーション不足の解消に役立ちます。3Dは「Microsoft Mesh」「Horizon Workrooms」「Virbera」などがあり、より多くのリアルタイム対話を伴う会議や懇親会などの用途に適しています。
このように2Dメタバースと3Dメタバースにはそれぞれ特徴と利用シナリオがあり、独自の価値を生み出しています。企業が活用する際は、それらを理解したうえで、用途や技術的な要件、予算など、自社のニーズに合わせて選択することが重要です。
必要な人材
メタバースビジネスを展開するには、高度なスキルを持つ専門家の支援が必要です。メタバースの開発に関わる主な職種について以下の表にまとめたので、ぜひ参考にしてください。
1.ゲームエンジニア | UnityやUnreal Engineなどのプラットフォームに対応するゲームエンジンを使用し、BlenderやMayaなどの3DCGのモデリングソフトを活用して、仮想世界を構築します。 |
2.Webエンジニア | ユーザーがメタバースにアクセスするためのWebベースのインターフェースやアプリケーションの開発を担当します。フロントエンドとバックエンドの両方のスキルが求められます。 |
3.iOS・Androidエンジニア | モバイルデバイス向けのメタバースアプリケーションの開発を担当します。タッチスクリーンやセンサーを活用した体験を提供することも可能です。 |
4.インフラエンジニア | メタバースのサーバーやクラウドの設計・構築・運用を行います。AWSやAzure、GCPといったクラウドを利用して、大量のユーザーデータを処理し、安定したサービスを提供する役割を担います。 |
5.3DCGデザイナー | メタバース内の空間やアバター、アイテムをデザイン・モデリングします。MayaやBlenderなどの3Dモデリングソフトを使用して、リアルなテクスチャやアニメーションを作り出し、ユーザーに没入感の高い体験を提供します。 |
6.UI/UXデザイナー | メタバースのユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスの設計を行います。ユーザーが快適にメタバースを体験できるよう、直感的で使いやすいデザインを追求します。 |
7.プロジェクトマネージャー | メタバース開発の目的や計画の策定、予算管理、スケジュール調整、品質・リスク管理などを通じてプロジェクト全体を統括します。 |
8.コンテンツクリエイター | メタバース内で使用される動画や音楽などのコンテンツを制作します。 |
関連記事:メタバースクリエイターとは?企業における役割を紹介
使われる技術
メタバースの開発と運用においては、多岐にわたる技術を使用してユーザーにリアルでインタラクティブなメタバース体験を提供します。以下に、メタバース開発に活用される主要な技術をご紹介します。
1.XR(AR・VR・MR) | XRとはCross Reality(クロスリアリティ)の略で、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、混合現実(MR)といった、現実に仮想世界を融合させた体験を提供する技術の総称です。これらはユーザーがメタバース内での没入感を高めるために欠かせません。 |
2.3Dコンテンツ制作技術 | 3Dモデリング、アニメーション、アバター生成、撮影画像を3D化するボリュメトリックビデオなど、さまざまな3Dコンテンツ制作技術によって、メタバース内にリアルな仮想環境が構築されます。 |
3.空間構造データや自己位置認識技術 | 空間構造データと自己位置認識技術を使用することで、メタバース内でのユーザーの位置や動きを正確に把握し、仮想空間をナビゲートします。 |
4.高速通信技術 | メタバースはリアルタイムのインタラクションをサポートするために、5Gやエッジコンピューティングなどの高速で安定した通信技術を必要とします。 |
5.AIを活用したデータ分析 | AI(人工知能)を活用して、ユーザーの行動データを分析し、よりパーソナライズされた体験を提供します。 |
6.ブロックチェーンとNFT | ブロックチェーンは、デジタルデータの安全性や取引の透明性を確保するための技術で、NFT(非代替性トークン)はブロックチェーン技術を基盤としたデジタル資産です。NFT化してデジタルデータに唯一性を与えることで、希少価値や資産価値を持たせる所有権を証明します。 |
7.IoTとMoT | IoT(モノのインターネット)とMoT(モノのメタバース)は、現実世界のデバイスやセンサーとメタバースを連携させるために重要です。 |
メタバースを開発する流れ
次に、メタバースを開発するための基本的なステップを解説します。メタバースは、創造性と技術的なスキルを持つ専門家が、前章で紹介した高度な技術を活用して、以下のようなプロセスで開発を行います。
1.コンセプトの設計 | メタバースを活用する目的や課題を明確化したうえで、ターゲットユーザーや世界観などのコンセプトを設計します。 |
2.メタバース空間の設計 | 仮想世界の地形、建築物、環境などの空間を設計します。ユーザーの動線や活動領域を考慮して空間構造を計画することが求められます。 |
3.空間やオブジェクトなどの制作 | 建物や家具、アバターなどの3Dオブジェクトやアセットを制作します。テクスチャ、照明などの視覚効果を活用してリアリズムを高めることも重要です。 |
4.3Dモデルの配置やインタラクションの設定 | 制作したオブジェクトをメタバース内に配置し、ユーザビリティを考慮してインタラクションを設定します。 |
5.メタバース空間のテスト・調整 | ユーザーテストを実施しフィードバックを収集して改善したり、不具合を修正したりして、ユーザー体験を向上するために調整します。 |
6.プラットフォームにアップロード・公開 | 公開前に最終チェックを行い、問題がないことを確認したら、開発したメタバースをプラットフォームにアップロードします。 |
7.メタバース空間の運用・改善 | 公開後も継続的にユーザーの行動やフィードバックを分析し、定期的なアップデートや新機能の追加をして、メタバース空間の運用と改善を行います。 |
メタバース開発における3DCGデザイナーの仕事内容
ここからは、仮想空間をリアルな世界へと進化させる3DCGデザイナーの仕事について詳しく見ていきましょう。メタバース開発において3DCGデザイナーの仕事内容は多岐にわたりますが、特に重要な以下の3つの役割について解説します。
- 3Dオブジェクトのデザインとモデリング
- メタバース空間の演出
- アニメーション作成とエフェクト追加
1.3Dオブジェクトのデザインとモデリング
メタバース内で使用される建物、乗り物、家具、キャラクターなど、あらゆる3Dオブジェクトの設計を行います。また、テクスチャやマテリアルを使用してオブジェクトにリアリズムを与え、3Dモデリング技術を使用して複雑な形状や構造を効率的に表現します。
2.メタバース空間の演出
制作したオブジェクトをただ配置するだけではなく、光の設定、影の落とし方、天候の変化など、照明や色彩を駆使して、メタバースの環境をデザインします。また、ユーザーのインタラクションや行動に応じて動的に変化する環境を設計することで、ユーザーがメタバース内で感じる雰囲気や感情に影響を与え、没入感を提供する空間を創り出します。
3.アニメーション作成とエフェクト追加
キャラクターやオブジェクトにリアルな動きを与えるためのアニメーション制作や、特殊効果の追加を行います。火花、煙、光の反射といったインタラクティブなエフェクトは、メタバースのリアリティを高めるために不可欠です。また、物理エンジンや動作キャプチャーなどの技術を利用して、自然な動きを生み出します。
メタバース開発で活躍する3DCGデザイナーに必要なスキル
メタバース制作に関わる3DCGデザイナーに求められるスキルは主に以下の4つです。
- ゲームエンジンの活用
- 3DCGソフトの使用
- UI/UXデザインに関する知識
- ビジネススキル
依頼する企業側はこれらのスキルを評価ポイントに設定し、人材を見極める際に役立てましょう。それぞれ詳しく説明します。
1.ゲームエンジンの活用
ゲームエンジンは、メタバース開発をするうえで欠かせない重要なツールです。UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンを活用すれば、リアルタイムレンダリング、物理演算、そのほかのインタラクティブな機能により、複雑な環境を効率的に構築することが可能です。そのため、ゲームエンジンのUIや高度な機能を理解して使いこなすスキルが求められます。
2.3DCGソフトの使用
メタバース内で使用されるオブジェクトやキャラクターの制作に必須となる、3DCGソフトを使用するスキルも必要です。Maya、Blender、3ds Maxなどのソフトウェアは、モデリング、テクスチャリング、アニメーションなどの制作をサポートし、リアルで品質の高いビジュアルを創り出します。
3.UI/UXデザインに関する知識
メタバースのUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)は、ユーザーの仮想世界での体験価値や消費行動を左右します。そのため、UIの設計原則と、UXデザインのプロセスやメソッドに関する知識と、効果的なUI/UXデザインを実践する能力が求められます。
4.ビジネススキル
クライアントや高度なスキルを持つ専門家たちと連携して、ビジネスに活用するメタバースを開発するため、以下のようなビジネススキルが必要です。
- プレゼンテーション力
- プロジェクトマネジメント力
- コミュニケーションスキル
また、市場動向やユーザーニーズを理解し、ユーザー体験を最適化するマーケティングの視点も求められます。
3DCGデザイナーのスキルを証明する資格
メタバース開発に関わる3DCGデザイナーの知識やスキルを証明する資格は、主に以下の6つです。
- CGクリエイター検定
- CGエンジニア検定
- Unity認定資格
- Photoshop®クリエイター能力認定試験
- Illustrator®クリエイター能力認定試験
- 画像処理エンジニア検定
3DCGデザイナーになるために資格取得は必須ではありません。しかし、資格を保有していることでスキルの高さはもちろん、自己成長への意識の高さや行動力の証明にもなります。メタバース開発を依頼する人材を評価する際は、上記に挙げた資格の有無をチェックし、面談で取得過程などについて質問してみましょう。
関連記事:メタバースのデザインを依頼するには?依頼先と探し方を解説
メタバース開発の外注先3つ
メタバースを自社で開発するには、高度なスキルを持つ専門家の採用や育成を強化する必要があり、膨大な時間やコストがかかります。そのため多くの企業では外部の専門家に依頼することが一般的となっており、社内に開発の知見やリソースがない場合は外注することをおすすめします。
メタバース開発の主な外注先は以下の3つです。
- メタバースプラットフォームを提供する企業
- 制作会社
- フリーランス
それぞれ詳しく説明します。
1.メタバースプラットフォームを提供する企業
メタバースプラットフォームを提供する企業は、仮想空間の基盤となるプラットフォームの開発に特化しています。そのため、メタバース開発においても高い技術力と組織力を持っています。
2.制作会社
制作会社は、品質の高いビジュアルデザインやクリエイティブなコンテンツの制作に長けており、メタバース内でユーザー体験を高める機能性とデザイン性を両立したサービスを提供しています。依頼する際は、各制作会社の強みや得意分野を比較し、自社のニーズと照らし合わせて見極める必要があります。
3.フリーランス
メタバースの開発実績があるフリーランスは、高度なスキルと知識を持っており、最新のトレンドや技術に詳しいうえ、プロジェクトの要件や特定のタスクに対して柔軟な対応が可能です。そのため、企業に依頼するよりも予算を抑えつつ、効率的にメタバース制作をサポートしてくれるでしょう。
一方、プロジェクトの途中で辞めてしまう可能性があり、リスクを回避するためには円滑なコミュニケーションを確保する必要があります。また、フリーランスは一人で作業するケースが多く、大規模で複雑な要件のプロジェクトを担うには限界があるでしょう。そのため、メタバース開発をフリーランスに依頼する際は、知識やスキルのほかコミュニケーション力や信頼性についても慎重に評価する必要があります。
以下の資料では、「初めて外注を活用する」という方に向けて、外注の流れをステップとして解説しています。無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご覧ください。
フリーランスの3DCGデザイナーの探し方
フリーランスの3DCGデザイナーを探す際におすすめの採用方法は、以下の3つです。
- 人材エージェント
- ダイレクトリクルーティング
- リファラル採用
人材エージェントを利用する最大のメリットは、エージェントの審査を経た専門的スキルを持つ人材が登録されており、優秀な人材を見つけやすく採用工数の削減につながることです。契約書作成や契約締結などにおいてもサポートを受けられるため、フリーランスへの業務委託に慣れていない企業にとっては特におすすめの方法です。一方デメリットは、利用料が発生する点と、自社に採用ノウハウが蓄積されにくい点が挙げられます。
ダイレクトリクルーティングは、企業側が採用したい人材へ直接スカウトを行い、能動的に採用活動を実行する方法です。企業側で選考人数を調整できるため、採用コストを抑えられる可能性がありますが、採用担当者のスキルや経験に左右されやすい点がデメリットです。
リファラル採用は、SNSなどを活用して自社の社員から友人や知人を紹介してもらう方法です。採用のミスマッチが起こりにくくコストを抑えられる点がメリットですが、期間内に求める人材を確実に採用したい場合には不向きでしょう。そのため、メタバースの開発に関わる3DCGデザイナーのような、高度なスキルと実績を必要とする人材を業務委託で採用する際は、人材紹介会社を活用することをおすすめします。
以下の記事では、デザイナー専門のエージェントサービス「クロスデザイナー」経由で、メタバース開発に関わるデザイナーを採用した法人様の導入事例をご紹介しています。
関連記事:チームの一員として並走してくれる、メタバース領域に強いデザイナーと出会った住友商事様
また、以下の資料では、「クロスデザイナー」に登録している注目デザイナーのリストの一部をご覧いただけます。こちらも無料でダウンロードできるので、ぜひご参照ください。
メタバース開発で3DCGデザイナーをお探しならクロスデザイナーがおすすめ
この記事では、メタバースの基礎知識を解説したうえで、メタバース制作に関わる3DCGデザイナーの仕事内容や必要なスキルなど、メタバース開発を検討する企業側が理解しておきたいことを詳細に説明しました。
メタバースを自社で開発するには膨大な時間やコストがかかるため、多くの企業では外部の専門家に依頼することが一般的となっており、社内に開発の知見やリソースがない場合は外注することをおすすめします。主な外注先としては「メタバースプラットフォームを提供する企業」「制作会社」「フリーランス」の3つが挙げられますが、メタバースの開発実績があるフリーランスなら、企業に依頼するよりも予算を抑えつつ、効率的にメタバース制作をサポートしてくれます。
その際、フリーランスの3DCGデザイナーへ外注する場合は、デザインの知識やスキル、費用相場について熟知した、実績と信頼のあるデザイナー専門のエージェントサービスに依頼すれば、業界に詳しく安心して任せられるでしょう。
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- クロスデザイナーの特徴
- クロスデザイナーに登録しているデザイナー参考例
- 各サービスプラン概要
- 支援実績・お客様の声
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