社内のリソースが足りないとき、コストを抑えてすぐにリソースが確保できる個人事業主との契約を検討している方もいるでしょう。
しかし、いざ個人事業主と契約しようとすると、
「初めての業務委託契約で、何から始めればいいかわからない」
「個人事業主とどのように契約すればいいんだろう」
といった悩みにぶつかることがありますよね。
そこで本記事では、 個人事業主への業務委託を検討している方に向けて、
・業務委託契約方法2種類
・個人事業主と業務委託契約を交わす手順
・業務委託契約書に記載すべき10項目
・個人事業主と業務委託契約する際の注意点
これらのポイントについて簡単に解説していきます。
正しく契約準備ができているかチェックしながら読み進められる内容になっているので、個人事業とのはじめて業務委託契約を結ぶ際の手引きとしてぜひお役立てください。
個人事業主との業務委託契約の種類
個人事業主へ業務委託をするときは、業務委託契約書を交わすのが一般的です。業務委託契約は、依頼したい業務によって「委任契約/準委任契約」と「請負契約」のどちらかで契約をします。
業務委託契約を結ぶときは、それぞれの契約形態について理解しておくことが大切です。「委任契約/準委任契約」と「請負契約」について詳しく解説します。
委任契約/準委任契約
委任契約/準委任契約は、業務の遂行を目的とした契約方法です。業務の完遂義務はなく、依頼した時間に応じて報酬を支払います。
委任契約と準委任契約の違いは、法律行為の有無です。委任契約は法律行為を委任するときの契約で、準委任契約は、法律行為以外の業務を依頼するときに使われる契約形態です。たとえばWebデザイナーやイラストレーター、ライターなどに業務の遂行を手伝ってもらいたいときは、準委任契約を活用します。
民法上「善管注意義務」が発生するため、企業側は業務の進め方について指示を出したり、進捗を確認したりしながら業務が正しく進んでいるかを確認することができます。しかし、雇用関係はないため、出社義務など具体的な細かい指示を出すことはできません。
関連記事:準委任契約とは? 請負契約との違いやメリット、デメリットを解説
請負契約
請負契約は、仕事を請け負う個人事業主が仕事の完成を約束したうえで、完成品の納品により報酬が支払われる契約形態です。何かしらの事情で仕事を完成できなくなった場合、契約の解除が可能です。
ただし、一部でも完成した仕事があり、それで利益を得られるときはその一部の完成品に対して、報酬を支払う必要があります。
契約で決めた仕事がまったく納品されなかった場合、企業は損害を受けることになります。請負契約には民法上「瑕疵担保(かしたんぽ)責任(契約不適合責任)」があり、未完成や納品後の成果物の不備など企業側にとって不利な状況となるときは、企業は個人事業主に対して損害賠償請求をすることが可能です。
関連記事:【企業向け】請負契約とは? 準委任との違いやメリット・デメリットを解説
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個人事業主と業務委託契約する手順4ステップ
個人事業主と業務委託契約を交わすときは、まず業務内容や見積もり金額など、一方が得をするような契約内容でないか双方で確認を行います。納得するまで修正を重ねることが大切です。
ここでは個人事業主と業務委託契約を交わす手順について解説します。スムーズに業務を委託するために参考になさってください。
1. 業務内容のすり合わせ・見積もり作成
まずはどのような仕事を依頼できるのか、業務内容を洗い出してすり合わせを行います。依頼する業務を決めたら、個人事業主に見積もり書を作成してもらいましょう。
見積もり書には業務内容以外に、納期や報酬の支払い条件などが記載されています。お互いに納得のいく見積もり書であると確認をしたら、業務委託契約書の作成へ移ります。
2. 契約書の作成
契約書には、すり合わせで合意した条件を盛り込みます。企業と個人事業主のどちらが作成するかは明確な決まりはありません。契約書に盛り込むべき項目があり、双方が納得していれば誰が作成しても問題はないとされています。
個人事業主に契約書の作成をお願いすることもできますが、今後も業務委託で外注を検討しているなら、この機会に自社でひな形を作成しておいても良いでしょう。
契約書は業務遂行におけるトラブルを防ぐために、双方が条件に合意した証明です。トラブルから裁判となった場合、契約書に記載された損害の範囲が争点となるケースが多いです。記載条項が多く複雑なものやいくつかの法令が絡むなど、依頼内容によっては、弁護士や行政書士などに作成してもらったほうが良いでしょう。
3. 契約内容の確認・修正
業務委託契約書が完成したら、個人事業主に内容をチェックしてもらいます。契約形態や報酬を支払うタイミングなどは、のちにトラブルとならないようにしっかりと確認してもらいましょう。内容に異議を申し立てられたときは、お互いに要望や条件をすり合わせながら修正を行います。
契約はどちらかに有利になってはいけません。個人事業主からの要望が自社にとって不利にならないか、よく検討することが大切です。同じように自社が優位になるような契約でないか慎重に検討しましょう。
4. 業務委託契約の締結
業務委託契約は双方で保有しなければならないため、契約書は2部作成をしましょう。記載内容に双方が納得をしたら、署名押印をして契約を締結します。
近年は、紙の契約書ではなく電子契約を交わすことも増えてきました。電子データ化された契約書は、内容が改ざんされないようにPDF化されているのが特徴です。メールやチャットですぐに契約書を交わせるため、時間も手間もかかりません。
紙の契約書と同じように、オンライン契約でも契約書の保管は必要です。2024年1月からは電子帳簿保存法により電子データの保存が義務となります。オンライン契約を交わした業務委託契約書は、電子帳簿保存法の対象となるため、電子契約についても理解しておくことが大切です。
個人事業主と交わす業務委託契約書に記載すべき10項目
個人事業主と業務委託契約を交わすときは、記載すべき項目が10個あります。個人事業主側もチェックする項目です。記載が必要な理由について解説します。
1. 契約形態
まずは、契約形態によって報酬の対価が変わるため、「委任契約/準委任契約」と「請負契約」のどちらであるかを明確にしておきましょう。
業務委託契約書によっては、契約書のタイトルに明記するケースやはっきりと書かないこともあります。長期契約や依頼する業務によって契約形態を変えることがあるときは、どちらの契約形態かをしっかりと書いておきましょう。お互いの認識のずれを防ぐことが可能です。
2. 業務内容・範囲
契約書作成前にすり合わせた内容を記載します。業務の遂行方法についても、手順があれば記載しておきましょう。また、対応してほしい業務範囲を明確にしておくことで、委託業務の抜け漏れを防ぐことが可能です。個人事業主側にとっては、範囲外の業務を依頼されたときに追加費用を請求できます。
3. 報酬の対価
「委任契約/準委任契約」は労働力、「請負契約」は成果物が報酬の対価です。「委任契約/準委任契約」では労働時間や日数、時給などについても取り交わしておくと良いでしょう。「請負契約」では報酬が発生する成果物の基準を明確にしておきます。
4. 成果物の帰属先
業務遂行で作成した成果物の著作権が、誰にあるのかを明確に決めておくことが大切です。通常、成果物の著作権は作成した個人事業主側に帰属します。取り決めがないと企業側は納品された成果物を自由に利用できません。
著作権を残しておきたいと考える個人事業主もいるため、企業側は成果物の利用を許可する範囲を契約書に盛り込む必要があります。
5. 納期・契約期間
成果物が完成するまでの納期や、契約期間についてもしっかりと契約を交わしておくことが大切です。成果物の完成が報酬の対価となる「請負契約」の場合、決めた納期を守れないといったトラブルも考えられます。納品が遅れたときの対応についても記載しておきましょう。また、納品後の検収時期ついても決めておくことで、請求関連のトラブルを防ぐことが可能です。
単発の案件や短期契約の場合、成果物の納品や業務の終了により契約期間も満了としても良いでしょう。長期契約で契約期間を自動更新とする場合、更新条件について記載しておくことも大切です。
6. 支払い時期・方法
個人事業主への報酬の支払いを詳細に記載します。企業から個人事業主への支払いは、月末締めの翌月払いが一般的です。
それに加えて、振り込み手数料はどちらが負担するかなども記載しておきましょう。
また下請法に適用される業務委託の場合は、企業は成果物が納品、または検収された日から60日以内にフリーランスへ支払わなければなりません。支払い日の起点は納品日と検収日で異なるため、どのタイミングで起算されるのかも書いておく必要があります。
定めた支払い時期を過ぎて支払うことになった場合、遅延利息(年率14.6%)を乗じた金額をくわえて支払わなければならないことを覚えておきましょう。
なお、下請法が適用される業務は以下の4つです。
・製造委託(物品の製造や加工の委託)
・修理委託
・情報成果物作成委託(デザインやプログラム、映像コンテンツなど)
・役務提供委託(運送やビルメンテナンスなど)
詳しくは、下記記事で解説しています。
関連記事:業務委託とは?簡単に、ほかの契約との違いやメリット・デメリットを解説
7. 契約解除の規定
長期契約を結んでいる場合、契約解除は個人事業主にとって大切な収入源を失うことになります。そのため、業務委託契約書で契約解除となるこまかい条件を定めて提示し、納得したうえで契約を結ぶことが大切です。
契約解除は個人事業主からも申し出ることができます。長期にわたって依頼を考えていたフリーランスから突然契約解除の申し出があった場合、新しく依頼するフリーランスを探さなければならないため、企業側にとっては大きな損失となります。そのため、契約解除を申し出る際の予告期間についても定めておきましょう。
8. 損害賠償の規定
契約違反や成果物による損害が発生した場合の損害賠償について定めておくための項目です。責任の範囲や損害賠償の対象となる期間、賠償額などを記載します。
とくに損害賠償の対象となる責任の範囲や期間が広すぎる場合、個人事業主にとって不利になりやすいため、スムーズに契約を結べない可能性もあります。お互いに公平となるように責任の範囲や金額を定めることが大切です。
9. 契約不適合責任(瑕疵担保責任)
契約不適合責任とは、成果物のクオリティが担保されていない場合、修正や報酬の減額、損害賠償、契約解除を企業が個人事業主に要求するものです。
以前は瑕疵担保責任と言われていましたが、2020年の法改正によって契約不適合責任に変更されました。
契約不適合責任は、請負契約のみ適用されます。
10. 禁止事項
「禁止事項」とは業務を依頼するにあたって、禁止することがあるときに示すための項目です。業務委託でも「請負契約」では、他者への再委託が可能です。しかし、情報漏えいのリスクが心配なときは再委託の禁止について盛り込んでおきましょう。
「禁止事項」についても公平になるように、下請法や独占禁止法などをふまえて内容を検討することが大切です。
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業務委託契約は4つの契約書を用意するのがおすすめ
個人事業主と業務委託契約を結ぶには「基本契約書」「個別契約書」「秘密保持契約書(NDA)」「反社会的勢力ではないこと等に関する表明・確約書」の4つの契約書を用意するのがおすすめです。
先述した内容をそれぞれの契約書に落とし込んで、記載するようにしましょう。
一度作成しておけば、次に別のフリーランスと契約を結ぶときにも活用できるものもあります。それぞれどのような契約書になるのか、くわしく解説します。
基本契約書
「基本契約書」とは、契約更新で変更されることがない内容を示す契約書を指します。主に以下の内容を記載します。
・契約形態
・契約期間と更新・解除方法
・著作権などの知的財産権
・経費の支払い
・管轄裁判所
「基本契約書」は単発の依頼よりも、継続性のある契約で用いられます。更新のたびに契約書の各項目を確認するのは双方にとって負担になるものです。初回の契約で変更しない内容を定めておくことで、更新となったときにスムーズに手続きできます。
個別契約書
「個別契約書」は基本契約書とは異なり、依頼する仕事の内容に応じて個別で結ぶ契約書を指します。主に記載する内容は以下のとおりです。
・基本契約との関係
・業務内容
・業務委託料
・契約期間
・業務仕様書との関係
・損害賠償
・管轄裁判所
基本契約書にも同じ項目がある場合、どちらを優先させるのかも書いておきましょう。契約更新で内容が変わらないときは、基本契約書と分けて作成する必要はありません。業務内容のみ変化するときは、個別契約書とは別で「業務仕様書」を用意することで契約書をすっきりと見せることができます。
秘密保持契約書(NDA)
「秘密保持契約書(NDA)」は、業務を遂行するうえで得た企業の内部情報の扱い方に関して定めた契約書です。契約を結ぶことで、情報の取り扱いに関する意識をもってもらうことを目的としています。記載する内容は以下のとおりです。
・契約期間中の秘密保持
・退職後の秘密保持
・損害賠償
・第三者の秘密情報
フリーランスなど社外の人間へ仕事を依頼する場合、企業側のリスク管理として必要な契約になります。案件によって秘密情報は異なるため、契約締結後はどの内容が秘密情報となるのか、メールやチャットなど記録が残るもので明示することが大切です。また、契約終了後に秘密情報の漏えいを防ぐため、情報データの返還や廃棄についても盛り込んでおきましょう。
秘密保持契約に違反されたときは基本契約書にのっとり、業務委託契約自体を解除できます。一度作成しておけば流用できるため、社員向けに作成したものがあれば利用しても良いでしょう。
反社会的勢力ではないこと等に関する表明・確約書
反社会的勢力と関係がないことを表明したうえで、虚偽であった場合は一切の損害責任とすることを確約させる書類です。記載する内容は以下のとおりです
・反社会勢力ではないことの表明、確約
・反社会勢力と密接な交友関係にあるものと関係性をもたない表明、確約
・暴力的な行為や脅迫的な言動をしないことの表明、確約
・表明、確約が虚偽であった場合、解約や損害賠償の責任を負うこと
万が一、仕事を依頼したフリーランスが反社会的勢力とつながりがあり、それが原因でトラブルが起きた場合、企業イメージに大きな影響を及ぼします。再委託を許可しているときは、再委託先との関係についても書いておきましょう。
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個人事業主との業務委託契約方法|2者間契約と3者間契約
企業と個人事業主の業務委託契約には、「2者間契約」と「3者間契約」の2つの契約方法があります。それぞれどのような契約になるのか理解したうえで、自社にとって契約しやすい方法を選んでください。
2者間契約とは?
2者間契約とは、仕事を依頼する企業と仕事を請け負う個人事業主の2者で契約を結ぶ方法です。
メリットとデメリットは、下記のとおりです。
メリット | デメリット |
・直接交渉で契約締結までが早い | ・契約内容を公平にするのが困難 |
2者間契約は仲介者がいないため、双方の要望を盛り込んだ契約書を作成できます。しかし、下請法など法律を理解していない場合、のちにトラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。
3者間契約とは?
3者間契約とは、企業と個人事業主の間に仲介サービスが立ち、契約を結ぶ方法です。
メリットとデメリットは、下記のとおりです。
メリット | デメリット |
・直接交渉で契約締結までが早い | ・契約内容を公平にするのが困難 |
企業とフリーランスから要望を聞き、下請法など法律に則った契約書を作成します。トラブル時にも対応を請け負うため、企業とフリーランスの両方が安心して仕事を進められるわけです。
仲介サービスには人材エージェントや求人サイトが該当します。サービス内容は各社異なるため、自社の状況に応じたものを検討してください。
個人事業主との業務委託契約では「偽装請負」に注意
個人事業主と業務委託契約を結ぶにあたって、注意をしなければならないのが偽装請負です。偽装請負とは、業務委託契約を結んでいる個人事業主に対して指揮命令を出すなど、労働者として働かせていることを指しており、違法行為に該当します。
偽装請負の判断基準は設けられているものの、知らないうちにそうなっていたというケースもあるため、下記に当てはまることがないように注意が必要です。
・出退勤の時間管理や勤務場所の指定
・再委託により責任者が誰かわからない
・労働時間で報酬が決まる
労働力に対して報酬を支払うときは準委任契約が適していますが、準委任契約でも出退勤の時間など労務に関する指示をこまかく出すと、偽装請負と判断されます。
偽装請負と判断されないためにも、指揮命令権と報酬の対価などにあわせて契約形態を見直すことも検討しましょう。
双方が気持ちよく仕事をするために意識するべきこと
業務委託契約書は、個人事業主と企業の双方が気持ちよく仕事をするために必要な契約書です。
近年はフリーランス人口が増加しており、副業フリーランスも増えてきました。そのため、個人事業主といっても仕事の受け方や意識には個人差があります。下請法など法律に関することまではわからない個人事業主もいることをふまえて、業務委託契約書を作成しなければなりません。
また、個人事業主側の認識不足により、偽装請負となった場合、罰則が課せられるのは仕事を依頼している企業です。お互いに気持ちよく仕事を進められるように、法律や偽装請負について意識をもったうえで業務委託契約書を作成しましょう。
デザイナーへの業務委託ならクロスデザイナーがおすすめ!
本記事では、業務委託契約を個人事業主と結ぶときの手順や作成方法について解説をしました。
契約を結ぶときはお互いに気持ちよく働くためにも、法律などを理解したうえで公平な契約書を作成するようにしましょう。
なお、フリーランスのデザイナーと業務委託を交わすならクロスデザイナーがおすすめです。
クロスデザイナーは3者間契約の、社内のリソース不足により、契約書作成における要望のすり合わせなども対応します。人材マッチングと契約手続きのプロが責任をもって対応するので、安心して業務委託契約を結ぶことが可能です。
Webデザイン、アプリデザイン、UI/UXデザインなど、会社が抱えるデザインの課題をヒアリングしたうえで、即戦力デザイナーを提案いたします。最短即日の提案も可能で、予算にあわせて週2〜3日想定の稼働などもご相談いただけます。
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