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偽装フリーランスとは、労働者と同じように働きながらも業務委託契約を結んでいる個人を指します。
フリーランスは事業主として、社会保険料は全額自己負担です。そのため、企業のなかには「安く使える労働力」としてフリーランスへ依頼するケースもあります。
過酷な環境で働く偽装フリーランスを保護するには、発注側となる企業が正しい知識を身につけることが大切です。
この記事では、偽装フリーランスの定義から、企業が注意すべき点について解説します。フリーランスデザイナーへの発注にあたって、偽装請負と判断されないためにもぜひ参考になさってください。
偽装フリーランスとは?定義と問題点も解説
偽装フリーランス(偽装請負)とは、2020年にフリーランス協会が公表した『フリーランス白書2020』で定義された言葉です。
偽装フリーランスの定義
偽装フリーランスとは、契約上は独立した事業者であるフリーランスとして業務を請け負いながら、実態は企業に勤める労働者と同様の働き方をしている状態を指します。
特定の企業の指揮命令下で働き、就労場所や時間が固定され、業務量を自由に調整できないなど、フリーランスの本来の特徴である自律性や裁量性が失われている状況を表します。
業務委託を検討されているなら、まずは各雇用形態について正しく理解することが大切です。以下の資料では、雇用形態の解説から業務委託を使用するメリットとデメリットについてまとめています。ダウンロードは無料ですので、ぜひご参照ください。
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フリーランス・個人事業主は事業者に分類される
▲出典:フリーランス協会「偽装フリーランス防止のための手引きを公開します」
フリーランスは専門スキルを活かして、複数のクライアントやプロジェクトに取り組む個人のこと。
労働人口減少による人手不足から、フリーランスの専門性や柔軟性に期待をして業務委託を検討する企業も増えてきました。
一方、個人事業主とは、自ら事業を営む個人を指しており、小売業や飲食業、製造業などが含まれます。実店舗の有無は問いません。
フリーランスも個人事業主に含まれるわけですが、個人事業主はフリーランスよりも長期契約や継続性が高い仕事が多いことが特徴です。
フリーランスと個人事業主は労働者ではないため、国民年金や国民健康保険料などは全額自己負担となります。また、帳簿付けなどの経理業務も自身でおこなうケースがほとんどです。
労働者は組織の一員として働く人
労働者とは、企業と雇用契約を結んで組織の一員として働く人を指します。勤務時間や勤務場所が定められており、報酬ではなく給与を受け取ります。
帳簿付けなどの経理業務は組織で対応するため、個人の負担はありません。
また労働者を保護するために、労働基準法や職業安定法などさまざまな法律があります。労働者の定義に該当しないフリーランスや個人事業主は対象外です。
偽装フリーランスが引き起こす法的問題
偽装フリーランスは、労働基準法違反や労働者派遣法違反などの法的問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
企業が実質的に労働者として扱っているにもかかわらず、法定労働時間を超えて働かせた場合、労働基準法違反となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、労働者供給事業に該当する場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金のリスクがあります。
さらに、社会保険関連法や独占禁止法違反の可能性もあるため、企業にとっては深刻な法的リスクと言えるでしょう。
偽装フリーランスが企業に与える影響
偽装フリーランスは、企業に以下のような深刻な影響を与える可能性があります。企業では、これらの影響を避けるため、適切な雇用形態の選択とフリーランスとの適切な契約関係の構築に注意を払う必要があります。
影響の種類 | 具体的な内容 |
法的リスク | 労働基準法違反として、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、労働者派遣法違反や社会保険関連法違反などの法的問題も引き起こす可能性があります。 |
経済的損失 | 従業員や他のフリーランスが偽装フリーランスの存在を知ることで、組織への信頼が損なわれ、労働環境が悪化する可能性があります。 |
信頼関係の損失 | 労働者としての権利を主張されることで、予期せぬ経済的負担(残業代の支払いや社会保険料の負担など)が発生する可能性があります。 |
企業イメージの低下 | 偽装フリーランス問題が公になった場合、企業の社会的評価が著しく低下し、ビジネスにも悪影響を及ぼす可能性があります。 |
関連記事:偽装請負とは?禁止事項や判断基準、問題点や罰則などを事例とともに解説
偽装フリーランスの判断基準3つと具体事例
以下のような基準を満たす場合、フリーランス契約ではなく雇用契約として扱われる可能性が高いため、企業側には十分な注意が必要です。
1. 就労場所や時間が固定されている
報酬が労働時間に応じて支払われる場合、雇用契約と近い形になるため、偽装フリーランスとみなされるリスクが高まります。特に、以下のような特徴がある場合は注意が必要です。
- 同意なく出社を命じられる
- タイムカードの打刻を求められる
- 勤務時間が固定され、調整がきかない
- 事前に見積もった時間が余った場合に他の新たな業務で消化させる など
また、フリーランス新法第3条では業務内容の明示が定められているため、これからフリーランスへ業務委託を検討されている場合は、契約書の作成ポイントを十分理解しておかなければなりません。
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2. 特定の企業の指揮監督下で労働している
フリーランスが発注者側の指揮監督下で業務を行っている場合、偽装フリーランスとみなされる可能性が高くなります。具体的には以下のような状況が該当します。
- フリーランスに業務依頼や指示を拒否する自由がない
- 業務内容や進め方について具体的な指示を受けている
- 勤務場所や勤務時間が固定されている
- タイムカードの打刻を求められる
- マニュアル通りの業務遂行を指導される など
関連記事:どこまでの指示が偽装請負になる?業務委託契約との関係性まで解説
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3.独立性や自立性の欠如
フリーランスとしての独立性や自立性が欠如している場合、偽装フリーランスとみなされる可能性があります。具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 業務量を自由に調整できない
- 業務に必要な機材やソフトウェアを発注者が提供している
- 複数の取引先を持つことが事実上困難である
- 業務上のリスクや責任を発注者が負っている
- 経験値や業務難易度を考慮せず、一律の報酬体系が適用されている など
下記の資料では、業務委託人材の労務管理について、正社員とも比較しながらポイントや注意点を解説しまています。ぜひ参考にしてください。
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企業が偽装フリーランスを回避するための対策と注意点
次に、企業が偽装フリーランスを回避するための対策について解説します。
1.適切な契約書を作成する
業務委託契約書に業務内容、報酬、納期などを具体的に記載し、雇用契約との違いを明確にしましょう。再委託の可否や責任範囲も明示することで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。また、契約内容は定期的に見直し、法改正や実態に即したものに更新することが重要です
下記の資料では、業務委託に必要な契約書を作成する際のポイントについて網羅的に解説しています。ぜひ参考にしてください。
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2.業務指示の範囲を限定する
フリーランスには業務遂行の裁量を尊重し、勤務時間や作業場所を指定しすぎないよう注意しましょう。過度な指揮命令や管理行為は、労働者とみなされるリスクを高めるため、業務成果にフォーカスした関係性を構築することが重要です。
3.適性な報酬体系を設定する
フリーランスへの報酬は、最低賃金を下回らないよう適切に設定する必要があります。成果物ベースでの報酬支払いを基本とし、不当な条件が含まれないように注意しましょう。
適正な報酬基準を設けることは、公平な取引関係を維持する重要な要素です。
関連記事:デザイナー評価項目・方法は?定性的になりがちな人事制度の見直し方
4.社内教育を実施する
社内の従業員向けに、偽装フリーランス問題のリスクや適切な運用方法についての教育を実施しましょう。特に契約担当者や現場責任者には、労働法や業務委託契約の基本知識を共有し、誤った対応を防ぐための意識改革が必要です。
5.定期的なリーガル(法務)チェックを実施する
偽装フリーランスを予防するためにが、弁護士や専門家による契約内容や運用状況のチェックを定期的に実施することも有効です。専門家のリーガルチェックを実施することで、法的リスクを早期に発見し、速やかに契約内容を修正できます。また、労働基準監督署への相談も有効です。
6.フリーランス新法へ対応する
2024年11月1日施行の「フリーランス新法」に基づき、業務内容や報酬条件を明示する義務を遵守しましょう。フリーランス新法は、企業が不平等な契約内容がないかを確認し、トラブル防止策として活用できる重要な指針です。
この法律は企業とフリーランス双方の権利保護を目的としています。詳しくは、公正取引委員会のWebサイトをご確認ください。
自社業務をはじめて外注する際は不安を感じる方も多いはず。そこで下記の資料では、外注の流れとポイントをステップ別に解説しています。無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
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偽装フリーランス問題発生時の対応と改善策
以下では、偽装フリーランスの問題が発生した時の対応と改善策について解説します。
労働基準監督署の調査への対応方法
まず、労働基準監督署の調査が合った場合には、誠実に対応することが重要です。調査官の来訪時は、適切な担当者が対応し、必要な書類を速やかに提出しましょう。
質問には正直に答え、隠蔽や虚偽の説明は絶対にしてはなりません。法律違反が指摘された場合は、是正勧告に従い、改善計画を立てて実行します。
また、調査の流れや準備すべき書類を事前に把握し、社内で対応方針を共有しておくことが大切です。
問題点の洗い出しと改善計画の策定
偽装フリーランス問題が発覚した場合は、まず現状の契約内容や業務実態を詳細に確認しましょう。フリーランスの働き方や指示の出し方、報酬体系などを精査し、労働者性が疑われる点を洗い出します。
問題点を特定できたら、法律専門家のアドバイスを受けながら、適切な契約形態への移行や業務プロセスの見直しなど、具体的な改善計画を策定します。
改善策はフリーランスとも協議し、双方が納得できる形で実施することが重要です。
再発防止のための運用体制の強化
再発防止には、社内の運用体制を強化することが不可欠です。まず、偽装フリーランスに関する法律や判断基準について、経営層や人事部門、現場管理者への教育を徹底しましょう。
また、フリーランスとの契約や業務管理のガイドラインを作成し、定期的なチェック体制を構築することも重要です。さらに、フリーランスの選定や評価プロセスを見直し、適切な業務委託関係を維持できる仕組みを整えます。
継続的なコンプライアンス強化により、偽装フリーランス問題の再発を防ぐことが可能です。
フリーランスを活用するメリット
次に、フリーランスを活用する主なメリットを紹介します。
専門性の高い人材の確保
企業がフリーランスを活用することで、高度な専門性を持つ即戦力を獲得できるメリットがあります。
フリーランスの多くは、Webデザインなどの特定分野で豊富な経験とスキルを有しているため、自社に不足している知識やスキルを補完し、生産性を向上させてくれるでしょう。
柔軟な人材リソースの活用
フリーランスの活用により、柔軟な人材リソース管理が可能です。
短期的なプロジェクトや繁忙期の対応など、期間や目的に応じて人材を確保できるため、社内リソースを最適化できるのがメリットです。また、自社リソースの業務負担を軽減し、コア業務に集中させることで、従業員満足度や生産性の向上にもつながります。
コスト効率の向上
フリーランスの活用は、コスト効率の向上にも貢献します。なぜなら、正社員雇用と比較すると、社会保険料や福利厚生費などの付随コストが不要で、必要な期間だけ契約できるために、大幅な人件費の抑制ができるからです。また、人材育成にかかる労力と時間、コストも削減可能です。
関連記事:フリーランスに業務委託するメリットと契約方法、注意点を企業向けに解説
以下では、実際にクロスデザイナーに登録しているデザイナーのスキルや得意分野などをピックアップしてご紹介しています。ぜひご参照ください。
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偽装フリーランスの権利保護と対策の方法
フリーランスが企業と安心して取引ができるように、国は法的に保護をするために整備を進めています。ここでは、フリーランスを保護するための権利保護と対策について解説します。
偽装フリーランス防止のための手引きの発行
▲出展:フリーランス協会『偽装フリーランス防止のための手引き』
『偽装フリーランス防止のための手引き』は、フリーランスや個人事業主のためのインフラ&コミュニティを運営するフリーランス協会が発行したものです。
業務委託契約の概要から偽装請負と判断される要素について、わかりやすくまとめられています。「偽装フリーランス防止のためのチェックリスト」もあるので、参考になさってください。
フリーランス協会『偽装フリーランス防止のための手引き』
フリーランス新法の設立
フリーランス新法は、業務委託を受けるフリーランスを保護するための法律です。規制の対象は、フリーランスへ業務を委託するすべての事業者になります。
フリーランス新法とは通称で、正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。2024年中には施行され、以下の規制が対象事業者に適用されます。
- 取引条件の明示義務:(第3条)
- 報酬期日の設定と期日までの支払義務(第4条)
- 受領拒否・減額等の行為の禁止(第5条)
- 募集情報の的確表示義務(第12条)
- 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)
- ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)
- 中途解除等の事前予告義務(第16条)など
▲出典:厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」
資本金の制限もなくなるため、フリーランスからフリーランスへの発注でも上記の規制が適用されます。
フリーランス・トラブル110番の設置
▲出典:フリーランス・トラブル110番
『フリーランス・トラブル110番』は、フリーランスや個人事業主の契約や仕事上のトラブルを相談するダイヤルです。国の各省庁と連携しており、無料で相談できるのが特徴です。
こちらのサービスはフリーランス向けですが、サイト内の相談事例集はフリーランスに対してやってはいけないことを知ることができます。
また、サービスを運営する第二東京弁護士会は、中小企業など企業経営者の事業に関する悩み相談を『ひまわりホットダイヤル』で受け付けています。偽装フリーランスや業務委託の不安などがあれば、ぜひ相談してみてください。
偽装フリーランスと判断されたらどうなるのか
フリーランス新法が施行後、フリーランスは、偽装フリーランスの疑いを『フリーランス・トラブル110番』など公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に設置される窓口に申告ができるようになります。
行政機関は相談内容に応じて対応をとるのですが、偽装フリーランスと判断された場合、以下の対応がとられます。
- 報告徴収・立入検査
- 指導・助言
- 勧告
- 勧告に従わない場合の命令・公表
もし偽装フリーランスなど法律に違反した場合、50万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
フリーランスが相談窓口を利用したことを理由に不利益となる扱いはしてはいけません(第6条3項)。
以下の資料では、初めてフリーランスへ依頼をする方に向けて外注の手順をわかりやすくまとめました。外部人材の探し方についても解説しています。ぜひご覧ください。
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偽装フリーランス対策はクロスデザイナーにおまかせください
偽装フリーランスと判断されるのは、労働者性が認められたときです。フリーランスとは対等な関係であると理解し、働く場所や時間を拘束してはいけません。
2024年中には施行されるフリーランス新法など、フリーランスを取り巻く環境は変化しています。業務を発注する企業側も適用される法令を理解し、正しい知識を持つことが大切です。
「偽装請負の判断基準がよくわからない」「フリーランスに発注するのがなんとく怖い」など、フリーランスへの発注に躊躇されているなら、フリーランスデザイナー専門のエージェントサービス「クロスデザイナー」へご相談ください。
クロスデザイナーには約7,000名のフリーランスデザイナーが登録しており、貴社のご要望にあった人材の提案が可能です。
業務委託契約の締結はもちろん、業務開始後もしっかりとサポートいたします。もちろん偽装請負にはなりません。
下記の資料では、クロスデザイナーを利用した事例集とサービス資料を無料でダウンロードいただけます。ぜひ社内にてお役立てください。
- クロスデザイナーの特徴
- クロスデザイナーに登録しているデザイナー参考例
- 各サービスプラン概要
- 支援実績・お客様の声
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