ビジネスにアート思考を取り入れたいと考えている方のなかには、「デザイン思考との違いは何か?」「アート思考を活用するにはどうしたら良いか?」といったお悩みを持つ人もいるでしょう。
この記事では、デザイン思考とアート思考の違いや、アート思考のメリット・デメリットについて解説します。
アート思考を取り入れたフレームワークもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
デザイン思考とは
デザイン思考とは、デザイナーやクリエイターが、より良い製品を作り上げるために、ユーザーや顧客の視点に立って、商品のニーズや課題・問題の本質を解決するために行う思考法です。
現在では幅広いビジネスで活用され、さまざまな製品やサービスに応用されています。
詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事:デザイン思考とは?概要から活用方法をわかりやすく解説|導入するメリットやフレームワークも紹介
関連記事:デザイン思考をビジネスで活用した事例8選|必要性や導入方法も解説
アート思考とは
アート思考とは、アーティストが自己の内部から湧き上がる感情や感覚をもとに作品を生み出すように、既成概念にとらわれずに、思考する側の独自性によってオリジナリティのある発想や答えを導く自由な思考法です。
既成概念や固定観念を超える新たな価値や商品・サービスを生み出すために有効な手法として注目されています。
デザイン思考とアート思考の違い
多くの企業が従来のやり方に限界を感じ、新たなアプローチを模索するなかで、デザイン思考とアート思考といった手法が注目されるようになりました。
そのため、従来とは違う発想法で新たな価値を創造するという点で、2つの思考法を活用する目的は同じです。
では、2つの思考法はどのように異なるかを説明します。
1つめの違いは出発点です。
アート思考は商品を生み出す側の立場で物事を考え、「自分軸」からアイデアを生み出す方法であるのに対して、デザイン思考はユーザーや顧客の視点や立場で物事を考え「他人軸」からアイデアを生み出す方法である点です。
2つめの違いは適性です。
デザイン思考が製品やサービスのブラッシュアップに向いているのに対して、アート思考は0→1の事業開発、企業のビジョンなどの策定、商品・サービスのコンセプトメイキングなどに適している点です。
デザイン思考 | アート思考 | |
出発点 | 他人軸 | 自分軸 |
適性 | 製品やサービスのブラッシュアップに向いている | 0→1の事業開発、企業のビジョンなどの策定、商品・サービスのコンセプトメイキングなどに適している |
アート思考とロジカル思考の違い
ロジカル思考は、デザイン思考やアート思考とともに注目されている思考法のひとつで、論理的な思考により、根拠と結論を明確にして課題を解決する方法です。
2つの思考法の違いは、アート思考が枠組みにとらわれない自由な発想法であるのに対して、ロジカル思考は合理性や論理的な思考法である点です。
ビジネスにアート思考を活用するメリット
技術革新のスピードが早く、社会環境の変化が目まぐるしいVUCAと呼ばれる時代で、停滞感や閉塞感に悩む企業も多いでしょう。
「VUCA」とは、英語の「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとって略した言葉で「ブーカ」と読みます。目まぐるしく変転する予測困難な状況を意味します。
アート思考をビジネスに取り入れる最大のメリットは、そのような状況のなかで、革新的なサービスや製品を生み出すことに繋がる点にあります。
アート思考をビジネスに活用した例として、スティーブ・ジョブズが文字のアートと呼ばれるカリグラフィーを学び、プロダクトに活かした結果、美しいフォントを持つMacが誕生したエピソードはあまりにも有名です。
アート思考を取り入れるデメリットと注意点
アート思考で抽出されたアイデアは論理的に説明しにくく、共通の認識を持つのが難しい点がデメリットです。
そのためチームで理解されにくい場合や、社内でスムーズに承認が得られない場合があります。
アート思考が組織に浸透していない段階では、チームプレーに適さない場合があることに注意し、他の思考法と使い分けることが重要です。
アート思考を取り入れた2つのフレームワーク
アート思考については定義や手法がまだ確立されておらず、世界中で研究が進められています。
そういったなかで、アート思考をビジネスに取り入れるためにフレームワーク化する取り組みが日本でも進められ、多くの企業で活用されています。
アート思考のメリットを活かし、デメリットを補うためにはそのようなフレームワークを活用すると良いでしょう。
アート思考を取り入れたフレームワークとして国内で発表されている主要なものは以下の2つです。
- ビジョンスケッチ
- アートイノベーションフレームワーク™
各フレームワークについて説明します。
1. ビジョンスケッチ
ビジョンスケッチとは、ビジョンを描く方法としてアート思考を活用したプログラムです。
2021年11月から電通により、企業の従業員・経営層に向けてアート思考を学ぶプログラムとして提供されています。
アートやデザインの領域に関わる人だけではなく、すべてのビジネスパーソンがアート思考を活用することができたり、既存の価値観が変化したりするよう設計されています。
ビジョンスケッチは電通の社内外横断プロジェクトチームである「美術回路」が担当しており、企業のアートを活用した戦略のコンサルティングやサポートを行っています。
以下のサイトでプログラムの詳細や実践事例をぜひチェックしてみてください。
2. アートイノベーションフレームワーク™
アートイノベーションフレームワーク™とは、凸版印刷と京都大学が開発した、アーティストの思考法をビジネスで活用するための思考法です。
アーティストが作品を生み出す際の思考プロセスを、発見・調査・開発・創造・意味づけの5段階に分けてフレームワーク化し、ビジネスシーンで既存の枠組みにとらわれない新たな価値を創り出すことを目的としています。
詳しい研究内容については、京都大学による以下の資料をぜひチェックしてみてください。
アート思考により人財育成を支援する新手法を開発 -アーティストの思考ロジックをフレームワーク化し、新たな価値創造で企業の人財育成・事業開発を支援-
世界のビジネスシーンで注目を集めるMFAとは
「MFA(Master of Fine Arts)」とは、日本では美術学修士と呼ばれる、アートの最高学位です。
2004年「Harvard Business Review」に発表された作家のダニエル・ピンク氏の“The MFA is the New MBA”と題した論文と、2008年にニューヨークタイムズ紙の掲載された同氏のインタビューを契機に、MFAは一躍話題になりました。
AIの導入など高度な技術革新により、人間に求められる能力が変化し、論理的なスキルだけでなく直感的な思考や創造力が重要視される傾向にあります。
そのため創造的な思考の重要性はますます高まり、世界的にMFA保有者が貴重な人材として評価され、活躍の場を広げています。また、数多くのグローバル企業が人材育成のためにMFAを採り入れるなど、MFA人材の価値が高まっています。
日本ではMFAが取得できる学校は少ないなかで、2020年に新設した京都芸術大学大学院では100%オンラインでMFAを取得できるプログラムがスタートし注目されています。
MFA(芸術修士)とは? | 京都芸術大学 大学院(通信教育)
デザイン思考やアート思考を取り入れるために専門家へ依頼するならクロスデザイナーがおすすめ!
本記事では、この記事では、デザイン思考とアート思考の違いや、アート思考のメリット・デメリットについて詳細に解説しました。
アート思考を取り入れたフレームワークもご紹介しているので、ぜひご活用ください。
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