企業の人事担当やデザインマネージャーの方の中には、自社でデザイナーの評価方法が明確になっておらず、より適切に評価する方法の必要性を実感している人も多いでしょう。
この記事では、デザイナーを評価する際の項目や方法を、事例を交えてご紹介します。
従来の人事制度を見直す際にもぜひ参考にしてください。
デザイナーの評価が難しい理由
デザイナーの業務とは、クライアントの要望やユーザビリティを考慮しながら、クリエイティビティを発揮してデザインすることです。
それによってユーザーに支持される製品やサービスを実現し、クライアントの利益に貢献することを目的としています。
デザイナーの評価が困難な理由は、このクリエイティビティや業績に対する貢献度の定量化が難しい点にあります。
デザインを重視する企業は競争力が高い
営業やマーケティングなどの成果は、定量的でわかりやすく、比較しやすいため、客観的で的確な評価がしやすいという特徴があります。
一方で、デザインの価値は定性的で、数値化できない要素が多いという特徴により、有効な経営手段としてデザインが認識されるためのハードルが高くなっています。
ではデザインへの投資はリターンに見合うのでしょうか。
経済産業省・特許庁による「「デザイン経営」宣言」から、その問いに対する回答は「Yes」であることを示す調査結果をご紹介します。
欧⽶では、デザインへ投資する企業のパフォーマンスについて、さまざまな面から研究が進められています。
ブリティッシュ・デザイン・カウンシル(British Design Council)(※1)によると、デザインに£1投資すると、営業利益は£4、売上は£20、輸出額は£5増加するとされています。
デザインへの投資は株価にも良い影響を与えることがわかっています。
デザイン賞を多く獲得している企業(166社)の株価は、市場平均(FTSE index)と比べて、10年間で約2倍もの成長を遂げているという分析結果が明らかにされました。
また、デザインマネジメント国際団体DMIの研究発表によると、Design Value Index(※2)は、デザインを重視する企業の株価は、S&P500(※3)全体と⽐較して過去10年間で2.1倍も成⻑したことがわかっています。
※1.英国政府による国際文化交流機関。世界中で英語教育を中心に科学や芸術、環境問題、起業など幅広く活動しており、特に芸術分野での取り組みに積極的。
※2. S&P 500企業のうちデザインを重視する企業16社
※3. アメリカの格付け会社であるスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)社が算出している、アメリカの代表的な大型株500銘柄の値動きを反映する株価指数「S&P500」を構成する500社。
デザイナーの評価制度がないことによるデメリット
デザイナーの評価制度がないことによるデメリットは主に以下の2点で挙げられます。
- 評価基準が人によって異なり不公平感が生じる
- 優秀な人材が適切に評価されず流出する
それぞれ詳しく説明します。
1. 評価基準が人によって異なり不公平感が生じる
評価基準が人によって異なり定性的になると、不公平感が生じ、評価に対して納得感が得られない場合があります。
デザイナーにとって納得のいかない評価やフィードバックは、モチベーションと共にデザイン力も低下させるおそれもあります。
2. 優秀な人材が適切に評価されず流出する
デザイナーの評価方法が明確になっていないと、クリエイティビティを適切に評価できず、キャリアパスを明確にできないため、優秀な人材が流出する懸念があります。
また、採用選考時にクリエイティビティを適切に評価できないと、スキルより人柄や印象を優先して、ニーズにマッチしない人材を採用してしまうこともあるでしょう。
その結果、現場ではスキル不足で活躍できないといった不幸も起こり得ます。
事例に学ぶデザイナー評価制度のつくり方
デザイナーの人事評価制度についてはさまざまな企業により研究が進められています。
自社で導入する際は他社の事例を参考にすると良いでしょう。
ここで、デザイナー評価制度についてナレッジをオープンにしている企業をご紹介します。
- マネーフォワード
- DeNa
- MIXI
- DMM
- アドウェイズ
それぞれ詳しく説明します。
マネーフォワードのデザイナー評価基準・育成制度
マネーフォワードでは、ジョブスキルにフォーカスした従来のデザイナー評価基準をアップデートし、デザイン組織づくりを強化。組織への貢献度や、同社のMVVC(Mission・Vision・Value・Culture)「Money Forward Culture Deck」の体現による独自の評価基準を新たに導入しました。
また、マネーフォワードのデザインチームは集権型ではなく、事業部ごとにデザイン部が設置されている分権型で、他の職種の評価制度との間でギャップが生じないよう、組織間で共有し合う取り組みも行っています。
詳しくは、マネーフォワード 執行役員CDO、UI/UXデザイナーの伊藤セルジオ大輔氏の記事「デザインマネジメントはきっと面白い」をご覧ください。
DeNaデザイン本部の育成の仕組み
DeNAの多岐にわたる事業において横断的に貢献しているDeNAデザイン本部は、SNSやブログなど複数のメディアで、デザイン組織として情報を発信しています。
実践的なデザイン事例のほか、次世代エースを創出するための新卒デザイナー育成の仕組みなども紹介されています。
年度を重ねるごとに精度を上げる、DeNAの「更新前提」新卒デザイナー育成の仕組み
以下の記事は、アサインの際に重視している点として、目標設定をもとにした成長への期待値や、キャリアに関する1on1について解説されており、デザイン組織のマネジメントにも役立ちます。
「事業グロース」と「個の成長」の両立を目指す、DeNAデザイン本部のアサインの仕組み
MIXIのデザイン職独自の評価指針
MIXIのデザイナーのうちおよそ1/3が所属するデザイン本部では、全社共通の従業員の等級制度をデザイナー向けにした指針を示して運用しています。
評価指針となるグレードは5段階あり、各段階で必要なスキルだけではなく、期待される視座を設定している点が特徴的です。視座とは、物事を見る立場や姿勢を意味します。
詳しくはMIXI執行役員 CDO、デザイン本部 本部長の横山義之氏の記事「MIXIにおける、デザイン職独自の評価指針をつくった狙いについて」をご覧ください。
DMMデザイン組織の評価のしくみ
DMMでは、組織体制を見直し、従来のデザイナーが事業ごとにアサインされる縦割りから、事業を横断して貢献する横串とのハイブリッド型で運用しています。
これによりアサインできるポジションが増え、希望するキャリアとスキルによってアサイン変更をしたり、組織を移動したりすることが可能になりました。
また、組織体制の見直しと共に、デザイナーのキャリア形成を意識した評価体制のアップデートも実施。事業ごとに必要なスキルを分解し、スキルと成果、行動における3つの評価を組み合わせたグレード設計と、キャリアマップや1on1でキャリア形成を支援して運用しています。
約100名のデザイナーのキャリア形成。DMMデザイン組織の評価とアサインのしくみ
アドウェイズのデザイン組織の評価制度
アドウェイズでは、デザイナーが縦割りの組織体制の中でプロフェッショナルとしてアサインされ、各領域で高い専門性を発揮できる仕組みになっています。
デザイナーは、職位・職能を中心としたオープンな人事評価制度により、自ら積極的にキャリアアップや、キャリアチェンジを選択することが可能です。また、OKRと1on1、柔軟に役割を変更できる文化をつくることで、キャリア形成をサポートしています。
詳しくはクリエイティブ領域のゼネラルマネージャを務める遠藤由依氏の記事「多様なキャリアの登り方を示す。アドウェイズデザイン領域の職位・職能設計」をご覧ください。
目標設定シートの作成に役立つテンプレート
デザイナーの評価や目標管理には、目標設定シートを導入する方法が効果的です。
ここからは、デザイナーの目標設定シートの作成や、評価項目・評価基準の設定に役立つ、厚生労働省「職業能力評価基準」の活用ツールをご紹介します。
「ウェブ・コンテンツ制作業の職業能力評価シート」は、職種別・レベル別に分かれており、それぞれ職業能力を判定するための基準となる評価シートと、判定の際に参照する詳細な基準を示したサブツールで構成されています。
- デザイナーの目標設定シートの具体例を知りたい
- どのような項目を設定したら良いか分からない
目標設定シートの導入やアップデートにあたり、上記のようなお悩みがあるマネジメント職の方は、こちらのツールを活用してみてはいかがでしょうか。ダウンロードして自社の組織向けにカスタマイズできます。
以下は、職種がサイト運営でレベル2の場合のサンプルです。
①被評価者の職種やレベルによってシートを選択し、②被評価者が自己評価を行い、③評価者がチェックして④評価ポイントなどをコメント欄に記入する仕様になっています。
サブツールのひとつである「OJT コミュニケーションシート」は、職業能力評価シートの結果がグラフで表示され、スキルアップのための課題や目標の見直しなどを明確にするために役立ちます。
以下は職種がサイト運営でレベル1の場合のサンプルです。
- 目標設定シートの管理や振り返りの方法が分からない
- 目標設定シートを活用して成長するためのアクションプランを作成するにはどうしたら良いか?
上記のようなお悩みがある方は、こちらのツールの活用を検討することをおすすめします。
評価とセットで必要な目標設定の仕方のついては関連記事もあわせてご覧ください。
関連記事:デザイナーの目標設定の仕方は?成長を促すためのポイントも
またデザイナーを採用する前に必要なデザインタスクを設定し、それに合わせて人材をアサインする「ジョブ型」の考え方もあります。ジョブ型雇用では、職務を定義して人材採用に役立てるジョブディスクリプションが必須。以下の資料では、テンプレート付きで作成方法を解説しています。
無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。
評価基準や行動目標の設定に役立つキャリアマップ
デザイナーのキャリア形成を明確にするためには、前章で紹介した厚生労働省「職業能力評価基準」の「キャリアマップ」を活用すると良いでしょう。
以下のサンプルには、各レベルで期待されるスキル習得に要する期間や、関連する検定・資格などが目安として示されています。使用する際は、自社の基準と照らし合わせて、必要に応じてカスタマイズしましょう。
また、職業能力評価シートを活用するための「導入・活用マニュアル」には、キャリアマップのレベル別に期待される能力についても示されています。
レベルに応じた評価基準や行動目標を設定する際に役立ちます。
デザイナーの評価や育成に役立つ本
ここからは、デザイン組織の体制や評価・育成に役立つ書籍をご紹介します。マネジメントスキルを高めたいデザイナーの方におすすめです。
デザイン組織のつくりかた デザイン思考を駆動させるインハウスチームの構築&運用ガイド
世界的に有名なUXのコンサルティング会社であるAdaptive Path(アダプティブ・パス)社の創設者であるピーター・メルホルツ氏が、長年取り組んできたデザイン組織の構築や運用をする際のノウハウが紹介されています。
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デザインリーダーシップ - デザインリーダーはいかにして組織を構築し、成功に導くのか?
リチャード・ベンフィールド氏が、デザイン事務所を創業し成長させてきた経験から実態に即してアドバイスを行っています。デザイナーやデザイン事務所経営者へ向けて、組織文化の作り方、採用や育成、営業活動など幅広いトピックを網羅しています。
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デザイナーを採用するならクロスデザイナーがおすすめ
本記事では、デザイナーを評価する際の項目や方法を、事例を交えて詳細にご紹介しました。
デザイナーは、クリエイティビティや業績に対する貢献度の定量化が難しいため、評価が困難とされています。
一方で、デザインへ投資する企業のパフォーマンスについての研究から、デザインに投資する企業は競争力が高いことがわかっています。
デザイナーの評価制度がないと、評価基準が人によって異なることにより不公平感が生じ、モチベーションと共にデザイン力が低下したり、優秀な人材が適切に評価されず流出するおそれがあります。
そのようなリスクを回避するためにも、デザイナーを適切に評価するための制度を設けることが重要です。
即戦力となるデザイナーを採用するなら、フリーランスデザイナーに特化したエージェントサービスの「クロスデザイナー」がおすすめです。デザイナーの人事制度の見直しや、評価項目や方法のアップデートのサポートも可能です。
クロスデザイナーは、登録時に厳正な審査基準を設けており、通過率はわずか5%です。採用難易度の高い即戦力デザイナーの中から、自社にマッチしたデザイナーを最短即日で提案できます。
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