この記事では、注目のジョブ型雇用について、内閣官房や経済産業省の資料などを参考に、特徴やメリット・デメリットなどを解説します。導入事例も紹介するのでぜひ参考にしてください。
ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用とは、企業が職務内容やポジション=ジョブを予め設定し、ジョブに対して適した人材を採用・配置・育成する制度です。ジョブ型は欧米で主流の雇用制度で、近年日本企業でも導入が進められています。
内閣府の資料によると日本企業のジョブ型の導入見込みは以下のようになっており、今後3~5年でメンバーシップ型からジョブ型への移行を検討している企業が増えることがわかっています。また、特に管理職でジョブ型の導入が急速に進み、数年後にはメンバーシップ型と同程度の割合となることが予想されます。
出典:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「基礎資料(令和5年2月)」
以下の経団連の調査によると、新卒採用におけるジョブ型採用を実施している企業は約2割となっており、検討中まで含めると、今後4割程度の企業がジョブ型採用を実施する意向を示しています。このことから、今後は新卒採用においてもジョブ型の導入が推進されることが想定されます。
ここで、ジョブ型雇用を理解するうえで重要な以下の4点について解説します。
- ジョブディスクリプション(職務記述書)
- 専門性の高い人材を中途採用する
- 同一労働・同一賃金の原則
- 解雇に対する考え方
1.ジョブディスクリプション(職務記述書)
ジョブディスクリプションとは、職務内容・責任範囲・必要スキル・求める成果などを定義した書類のことで、日本語では「職務記述書」と呼ばれています。このジョブディスクリプションの作成は、ジョブ型雇用で最も重要なポイントの1つです。
人材を募集する際は、職務に関する詳細をジョブディスクリプションでまとめておくことで、それを基に必要な能力を持つ人材の募集を行います。職務内容が明確であるため、人事評価もジョブディスクリプションを基に行なわれるのが一般的です。
例えば、日立製作所のキャリア採用では、以下のように具体的に求めるスキルを明示しています。
このようにジョブディスクリプションに採用する人材の能力や役割、経歴などを明確に記載することで、ミスマッチを予防し効率的な採用を目指すことが可能です。
以下の資料では、ジョブディスクリプションの作成方法をテンプレート付きで解説しています。無料でダウンロードできますので、ジョブ型の採用活動にぜひお役立てください。
2.専門性の高い人材を中途採用する
現在、社会的に人材が不足している一方、多くの企業で人件費や採用基準の見直しが行なわれています。そのなかで「自社で未経験者を育てる」という方針を改め、「即戦力を採用する」方針へ移行する企業も少なくありません。
ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプションにより各職務が明確に定義され、採用や人事評価に活用されます。そのため、専門性が高く即戦力となる人材(=スペシャリスト)を採用したい企業に向いている仕組みと言えるでしょう。
3.同一労働同一賃金に対応
2021年4月から、正社員と非正規社員の待遇差を是正することを目的として、すべての企業に「同一労働同一賃金」への対応が義務付けられました。
ジョブ型雇用では、基本的には年齢や雇用形態に関わらず、同じ職務に対しては同じ報酬が支払われるといった特徴があるため、従業員の公平性が担保されやすくなります。この仕組みにより、ジョブ型雇用の導入は同一労働同一賃金への対応としても有効です。
4.解雇に対する考え方
ジョブ型雇用で採用した職務そのものがなくなったり業績が悪化したりした場合に、比較的解雇がしやすいといった考えをお持ちの方がいますが、これは間違いです。日本では労働者の解雇に関する規制が厳しいため、正当な理由なく解雇することはできません。
そのような場合には、ジョブディスクリプションを人材活用に利用して配置転換を行い、新たなポストを用意しましょう。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い
前章で紹介した通り、これまで日本の雇用制度はメンバーシップ型が主でした。では具体的にどのような特徴があるのか、ジョブ型と比較して見ていきましょう。
出典:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「基礎資料(令和5年2月)」
上述のように、メンバーシップ型は新卒一括採用中心、報酬は年功、異動は従業員の意向ではなく会社主導で行われている点などが特徴です。また、将来に向けたリスキリングが活きるかどうかは人事次第で、従業員の意思による自律的なキャリア形成が行われにくいシステムとなっています。
また、このようなメンバーシップ型の雇用制度により醸成された企業風土の影響を受けて、従業員エンゲージメントも労働市場の流動性も低く、所得が上がらない構造が定着してしまっています。
以下の「従業員エンゲージメントの国際比較」では、欧米諸国のみならず近隣のアジアの国々と比較しても、日本の従業員エンゲージメントが低いことが明らかになっています。
ジョブ型雇用が注目されている背景
では、これほどまでにジョブ型雇用が注目され、多くの企業がメンバーシップ型からの意向を実施・検討しているのはなぜでしょうか?その背景を解説していきましょう。
従来のメンバーシップ型雇用を主とする日本企業と、ジョブ型が一般的な海外企業では、以下のように同じ職種でも賃金格差が大きくなっています。
(注)2023年1月時点の世界の職種別総現金報酬水準(専門職シニア7−10年目)について、それぞれの国において、全職種合計を100とし、各国ごとに全職種合計と各職種の賃金の比率を示したもの。(出所)マーサー社資料を基に内閣官房が作成。
出典:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「基礎資料(令和5年2月)」
このことから、専門性が高く優秀な人材が日本企業から流出して、海外企業に奪われつつあることが想定されます。その危機的状況を打開するため、雇用制度の見直しが求められており、グローバル企業を中心にジョブ型雇用を導入する企業が増加しているのです。
日本企業がジョブ型雇用を導入するメリット・デメリット
欧米で主流のジョブ型を日本企業が導入するメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
1.処遇の適性化 2.高度専門人材の獲得 3.若手の優秀人材の抜擢 4.将来有望な社員のリテンション 5.グローバル化への対応 | 1.転職のリスク 2.昇給や昇進の難しさ 3.人材育成の壁 |
メリット1.処遇の適性化
ジョブ型では職務によって報酬が決まるため、仕事や成果に応じた処遇への見直しを図ることができます。例えば、年齢や勤続年数に応じて高い処遇を得ている社員に対して、報酬面での適正化を行うことで、社員の公平性を担保することにつながります。
メリット2.高度専門人材の獲得
前述のとおり、ジョブ型は専門性が高く即戦力となる人材の採用に向いています。そのため、ITやデザイン人材の獲得競争が激化するなかで、優秀な人材を獲得できる仕組みの構築に役立ちます。
メリット3.若手の優秀人材の抜擢
年功序列のメンバーシップ型では、活躍の場を充分に与えることができなかった若手もいるでしょう。ジョブ型なら適材適所の観点から、重要な職務に抜擢することが可能になります。
メリット4.将来有望な社員のリテンション
メンバーシップ型では、ポテンシャルが高くても年齢が低いと高い処遇を与えることができないといった課題もあるでしょう。ジョブ型なら年齢に関わらず職務に応じて相応しい処遇を与えることができ、優秀な人材の流出防止につながります。
メリット5.グローバル化への対応
日本も欧米で一般的なジョブ型雇用が主流となるよう雇用制度を移行し、国や地域を越えた全世界共通の報酬体系を構築することで、国内に優秀な人材を維持することができます。
デメリット1.転職のリスク
ジョブディスクリプションに定義された職務に人材を当てはめるため、あらかじめ決められた職務そのものがなくなった場合、柔軟な配置転換が難しく、新たに適切なポジションを与えないと人材が流出するリスクがあります。
また、専門性が高く優秀な人材は市場からの評価が高く、同じ職務でより良い条件を提示された場合や、さらなるスキルアップを目指す場合も転職されるリスクがあります。
デメリット2.昇給や昇進の難しさ
欧米流のジョブ型では、日本のような会社命令による人事異動や昇給・昇進という概念はありせん。そのため、従来の勤続年数や年齢を基準とした昇給や、人事異動制度の一貫としての昇進の継続は難しいでしょう。
デメリット3.人材育成の壁
ジョブ型雇用の仕組みは、専門性の高い人材の獲得には向いていますが、一方で、社内の幅広い職務を経験したジェネラリストの育成には不向きな面があります。また、メンバーシップ型における人事の権限を各部署の管理職に移すことが必要になりますが、管理職のマネジメント力が不足していると部下のスキルアップも難しくなるでしょう。
導入事例に学ぶ!ジョブ型雇用の進め方
メンバーシップ型からジョブ型への移行にあたっては、自社に合った導入の仕方を検討する必要があります。ここからは、大手企業から中小企業までさまざまな事業規模・業種におけるジョブ型雇用の導入事例を紹介します。
大手企業の導入事例
ジョブ型雇用は、日立製作所、富士通、資生堂といった日本を代表する大手企業から導入を始めたと言われています。これらの企業は、以下のようにジョブ型を一度にではなく順次導入したり、スキルだけではなくパフォーマンスや行動の適格性を勘案したり、企業特性に合った方法で導入を進めています。
中小企業の導入事例
続いて、内閣官房の資料から、以下の4つのポイント別に中小企業の導入事例をご紹介します。自社の実態に合った人事改革の参考にしてください。
1.導入目的 | 【電機メーカーF社】 ・IT企業からDX企業に変わる手段として、事業戦略に基づいた組織デザインを実現するためには、年功的人事制度から脱却し、最適な人材をアサインできるジョブ型への移行が必要。 【化粧品メーカーS社】 ・グローバルに勝てる組織を確立するためには、ジョブ型を通じて以下の3つの改革が必要。 ①優秀な外部人材に対するアピール ②人材育成における専門性強化へのシフト ③キャリアプランの選択肢の可視化を通じた社員の自律的なキャリア形成促進 |
2.人材の配置・育成・評価方法 | 【電機メーカーH社】 ・個別のジョブディスクリプションを全社員に公開し、そのジョブに対して「現職者及び(社内外の)候補者・希望者の中で誰を配置するか」、「最適な人財として配置する具体的・客観的な理由は何か」を議論し、適任者を配置する。 【電機メーカーF社】 ・職能ベースの報酬体系を見直し、管理職についてはそのジョブに紐づく報酬を個人の報酬にも反映する。一般社員については外部労働市場の報酬水準をベンチマークの上、職責ごとに従来よりも細かな給与レンジを設定し、社員の貢献・行動に基づく評価が報酬に反映されやすい仕組みとしている。 |
3.ポスティング制度 | 【電機メーカーF社】 ・ポスティングによる異動・幹部社員昇格を主軸に据え、新任課長ポジションは全て上司の推薦ではなくポスティングにより登用する、ポスティングの対象をグローバル全体に拡大する等、ポスティング制度を大幅強化した結果、3年間で国内社員の4分の1がポスティングに応募。合格しなかった社員には、どの点が足りなかったかを必ずフィードバックし、本人のキャリア形成へと活かしてもらっている。 【化粧品メーカーS社】 ・空きポストができたところで、随時社内でポスティングを通じた人材募集を行い、社内の職種間での労働移動も含めて、社員本人の意思に基づく人事異動を行う。 |
4.導入方法 | 【電機メーカーH社、電機メーカーF社、化粧品メーカーS社】 ・ジョブディスクリプションの作成に当たっては、外部の人材コンサルティング会社が保有するグローバルに標準化されたジョブの定義を参照し、それを自社向けにアレンジすることで、速やかな移行が可能となった。 |
ジョブ型を活用してフリーランスに外注するのも有効な方法
企業と労働者の関係は選び・選ばれる対等な関係へと変化し、キャリアは会社から与えられるものから、労働者が自分の意志でキャリアを構築する時代となっています。このような時代において欧米では従来の雇用制度にとらわれない人材活用法を追及しています。
日本でも近年の社員採用の難しさから代替手段として注目されているのが、フリーランスなど外部人材への業務委託です。上述の通り、正社員採用においてメンバーシップ型からジョブ型雇用へ移行する際は、企業の特性に合った導入に手間や時間がかかります。
そのため、ジョブ型を順次導入する際は、ファーストステップとして業務委託で取り入れてみることをおすすめします。フリーランスとの業務委託は仕事ベースで人材をアサインするので、ジョブ型雇用の仕組みに近いものがあります。また、即効性のある人材不足の解消法としても、フリーランスへの外注は大変有効です。
フリーランスデザイナーを探すならエージェントの活用がおすすめ
フリーランスを採用する主な方法としては、スカウト型サイト、求人広告、リファラル採用などがありますが、デザイナー採用に慣れていない企業はエージェントの活用がおすすめです。エージェントに依頼すれば、企業とデザイナーのニーズをもとにエージェントが介在して取引を進めてくれるため、採用の手間が省けます。
フリーランスデザイナー専門のエージェントを利用するメリット
デザイナー専門のエージェントサービスを利用して得られるメリットは、主に以下の5つです。
- 即戦力となるデザイナーを採用できる
- 面倒な条件交渉や契約手続きを代行してくれる
- 契約を適切に運用できるようフォローしてくれる
- デザイナーとの間でトラブルが発生した際に仲介してくれる
- 業務委託から正社員への移行もスムーズ
それぞれ詳しくご説明します。
1.即戦力となるデザイナーを採用できる
フリーランスで活躍するデザイナーは、即戦力となるスキルをもつ方が多いです。しかし、たとえ優秀なデザイナーであっても自社の業務や目的に合っていないと意味がありません。
こうしたマッチングにおいても、デザイナー専門のエージェントであれば、対象となる企業に必要なリソースを選んでマッチングしてくれるため、採用の精度はより高くなるでしょう。
2.面倒な条件交渉や契約手続きを代行してくれる
デザイナーを採用する際のポイントや評価基準などについて、デザイン業界に詳しいエージェントの手厚いサポートを受けられるうえ、面倒な条件交渉や契約手続きも代行してくれます。そのため、難易度の高いデザイナー採用にかかる工数を削減でき、効率的に採用活動を行うことができます。
以下の資料では、初めての方でも業務委託活用に踏み出せるよう、契約形態ごとに概要や特徴を解説し、比較表としてまとめています。無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
3.契約を適切に運用できるようフォローしてくれる
フリーランスデザイナーへの業務委託契約は、リソース不足の企業にとって強い味方となる一方で、契約形態の違いや法律に関する知識がないと、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
そのため、業務委託契約に詳しく、業務の依頼の仕方などのノウハウを持つデザイナー専門のエージェントを活用すれば、契約を適切に運用できるようフォローしてくれるため、万が一トラブルが起こった際のリスクヘッジにもなります。
以下の資料では、契約をはじめとした業務委託人材の労務管理について解説しています。無料でダウンロードできますので、リスクを抑えて外部人材を活用するために、ぜひお役立てください。
4.デザイナーとの間でトラブルが発生した際に仲介してくれる
デザイナー専門のエージェントを活用すれば、フリーランスデザイナーへの報酬額や支払い方法が適切に設定されるようサポートしてくれます。また、万が一納期遅れなどのトラブルが発生した場合も、フリーランスデザイナーの間にエージェントが入って仲介してくれるケースもあります。
5.業務委託から正社員への移行もスムーズ
業務委託から正社員に登用する際は、労働条件の変更や待遇の見直しを行い、社会保険の加入や有給休暇の付与、税金の手続きなどが必要になる場合があります。このような雇用形態に伴う煩雑な作業も、エージェントを利用すればスムーズに行えます。
デザイナー専門のエージェントを利用するデメリット
専門性の高いエージェントを利用する際は、以下のデメリットを念頭に置いて採用に臨みましょう。
1.候補者が少ない場合がある
2.総合的なスキルを持つ人材の採用が難しい
それぞれ詳しくご説明します。
1.候補者が少ない場合がある
デザイナーの登録者数が企業からの依頼数に比べて少ない場合、紹介される候補者が少ないことがあります。利用を検討しているエージェントサービスにどのような人材がどのくらい登録されているのか、登録しているデザイナーはどのように審査されているのか、あらかじめ確認しておきましょう。
2.総合的なスキルを持つ人材の採用が難しい
エージェントサービスには、デザイナーやエンジニアなど専門知識や高度なスキルを持つ人材が多く登録されていますが、反対に汎用性の高いスキルを持つジェネラリスト的な人材の採用が難しいこともあります。
デザイナーを採用するならデザイナー専門エージェントのクロスデザイナーがおすすめ
本記事では、注目のジョブ型雇用について、特徴や導入が進められている背景、メリット・デメリットなどを詳細に解説しました。さまざまな企業の導入事例もご紹介しているので、自社に合った導入方法を検討する際にぜひ参考にしてください。
メンバーシップ型からジョブ型雇用へ移行するには大変な手間と時間がかかるため、順次導入のファーストステップとして業務委託で取り入れてみるのもひとつの手です。フリーランスとの業務委託は仕事ベースで人材をアサインするので、ジョブ型雇用の仕組みに近いものがあります。また、即効性のある人材不足の解消法としても、フリーランスへの外注は大変有効です。
フリーランスへ依頼する際はエージェントサービスの利用がおすすめです。特に企業がデザイナー採用に慣れていない場合は、デザインの知識やスキル、費用相場について熟知した、実績と信頼のあるデザイナー専門のエージェントサービスに依頼すれば、業界に詳しく安心して任せられるでしょう。
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