従来の手法とは異なった商品開発へのアプローチが今、求められています。「デザインリサーチ」とは、ユーザーの潜在的なニーズを探り、ユーザーをより深く理解していくための方法です。
これまでリサーチとして一般的な主流にあったマーケティングリサーチは、商品を提供する会社主体で調査が進められている側面があり、ユーザーの本質的なニーズにまで触れられていない課題がありました。
しかし、デザインリサーチ独自の手法により、言語化しにくかった領域にまで明らかにし、デザインに取り入れていくことで、ユーザーに長期的に使われていく商品となったり、ユーザーが新たな価値を見出していったりしています。
昨今、ユーザー主体のUXデザインがより多く取り入れられている現状があります。UXデザインの考え方も含めた、デザインリサーチにより得られる情報から新たな取り組みを進めていくことで、より価値の高い商品を設計し、提供することができるのです。
本記事では、デザインリサーチの目的や考え方、代表的な手法とともに、実際に取り入れている企業の活用事例やメリットなども紹介します。
デザインリサーチとは?
デザインリサーチとは、その名の通り製品をデザインするために必要な調査ということになります。
デザインする製品とは、ソフトウェアやアプリといった物理的に存在しないものも含まれるため、本記事では「プロダクト」として表記します。また、デザインリサーチについてまとめた『デザインリサーチの教科書』を参考にしつつ、さまざまな知見を含めながら解説していきます。
プロダクトがデザインされる過程では、デザイナーはさまざまな情報を集めて整理し、知見を見出し、アイデアを創出するというプロセスがあります。
この整理からアイデア創出までのプロセスでは、デザイナーは次のような事項についてリサーチを重ねていきます。
- 人々がどのような生活を送っているか
- 人々がどのようなニーズや願望を持っているか
- 社会がどのような課題を抱えているか
- 私たちの社会の未来はどうあるべきか
- ユーザーに受け入れられるのか
- ビジネスとして成功するのか
こうしたリサーチを経て、新規のプロダクトや既存のプロダクトの改善につなげるデザインをしています。
なぜ今、デザインリサーチ?注目される理由
次のような社会状況が背景にあります。
- デザインの対象とする領域が拡大していること
- 多くの人がさまざまなプロダクトを手に入れられるようになったこと
- 社会の変化するスピードが高まり、未来を予測することが難しくなっていること
- これまで通りのものづくりの方法が通用しなくなっていること
などです。
従来のマーケティングリサーチでは、変化の激しい社会において、人々が求める商品やサービスを提供することに限界があり、イノベーションが求められています。また、先進国においては社会が成熟化し、物や食など必要なものはある程度満たされており、単に製品を出せば売れるという時代ではなくなったことも関係します。
それらを解決する手法として、デザインリサーチというものに注目が高まっています。
デザインリサーチとUXリサーチ
デザインリサーチと近い意味合いの言葉として、UXリサーチがあります。
先述した『デザインリサーチの教科書』を著した木浦幹雄さんが代表を務める、アンカーデザイン株式会社では、デザインリサーチとUXリサーチは同義語として紹介されています。
既存プロダクトの課題や、改善可能性はどこにあるのか。新規プロダクトとして何を作るべきか。誰に何をどのような方法で提供すれば良いのかを明らかにします。
引用:デザインリサーチ/UXリサーチ|ANKR DESIGN
UXリサーチは、デザインリサーチと同様に、「UXデザインをするためのリサーチ」です。
UXとは、「ユーザーが企業や製品、サービスに触れ、利用した際に得られる体験・感情の総称」を指します。UXデザインとは、こうした一連のプロセスにおいて、ユーザーが最適な体験をするためのデザインということになります。
そのため、UXデザインを考えるうえで、そもそもユーザーの体験とはどういうものなのか、ユーザーがどんな体験をしているのか、そのプロセスを知ることが必要となります。また、そのプロセスにおいて、ユーザーがどんなニーズを持ち、どんな心理状態にあるのかを把握することも重要です。
こうしたUXデザインをするうえで必要な情報を、ユーザーからインタビューするなどして調査することが、UXリサーチとなります。
デザインリサーチとは、ユーザー起点による調査という意味では一致していますが、さらにユーザー調査から潜在的なニーズを明らかにして、実践できるアイデアを出していくという点で、UXリサーチよりも広い意味合いを持ちます。
マーケティングリサーチとデザインリサーチとの違い
プロダクトを設計していくうえで、従来よりマーケティングリサーチというものが知られています。
マーケティングとは、商品やサービスが売れる仕組みを作ることです。そのために、企業は次のような課題に取り組むことがあります。
- 自社の商品やサービスはどんな人をターゲットにすべきか、利用者に満足されているか
- 新商品の価格はいくらにすべきか
- 販促活動として行ったキャンペーンやイベントがどの程度の効果をもたらしたのか
マーケティングリサーチとは、企業のこうしたマーケティング課題の数々に対して有効な意思決定をするための情報を集めることを指します。
こうした情報収集は、既存の製品やサービスをどのように改善すれば、消費者に受け入れられるのかを探るためには有効かもしれません。しかし、新しいプロダクトを創出したい、イノベーションを起こしたいと考えたとき、上記のような問いの立て方では答えが出せません。
このように前者では、現状分析が主となり、後者では現状を起点にしつつ顕在化されていない情報を明らかにして、読み解くことが求められます。
マーケティングリサーチとデザインリサーチの、調査目的や調査手法、分析の視点・スタンスは次のようになっています。
調査目的 | 調査手法 | 分析の視点・スタンス | |
マーケティングリサーチ | 既存の製品やサービスをどう改善すべきか、消費者に受け入れられるものを探る。 現状分析が主となる | 定量調査を中心とする | 収集した情報を正確に読み解く |
デザインリサーチ | 新しいプロダクトを創出するため、イノベーションをどう起こせるのかを探る。 現状を起点にしつつ、顕在化されていない情報を明らかにして、読み解く | 定性調査を中心とする | 収集した情報から潜在的なニーズを洞察し、新たな課題を発見する |
デザインリサーチの目的については、詳しくは後述します。
調査手法は定量調査もしくは定性調査を中心とするのか、分析の視点が変わってきます。デザインリサーチの目的は詳しくは後述しますが、大きくはユーザーの潜在的なニーズを明らかにすることです。以下に、それぞれの違いをまとめました。
マーケティングリサーチでは、商品やサービスが売れる仕組みを作るために顧客のニーズを満たすこと、満足度を高めることなどを目的としています。顧客のニーズはすでに顕在化されたものです。
たとえば、「自社の商品やサービスは顧客に満足されているか?」を考えた場合、アンケートなどにおいて満足の度合いを数値化し、満足度が低ければ、顧客の不満の内容をもとにニーズを満たすことを考えます。
しかし、デザインリサーチでは、そもそも顧客の本質的なニーズは顕在化していないことがあると考えます。デザインリサーチにおいても、同様の調査をすることはあっても、インタビューやヒアリングから、ユーザーの言語化できていないニーズをも読み解いていきます。
上記のことから、マーケティングリサーチとの違いについて、次の3点が挙げられます。
- ユーザー起点による情報収集
- 質的調査が中心となる
- 言語化されていないニーズを明らかにする
順に解説します。
1. ユーザー起点による情報収集
デザインリサーチでは、ユーザー起点による情報収集が行われます。マーケティングリサーチの目的は、企業の商品やサービスが売れる仕組みを作るために行うというものでしたが、デザインリサーチは、ユーザーの潜在的なニーズを明らかにすることです。
マーケティングリサーチが既存の商品を現状の価値からより改善し、満足されるものを生み出すための現状分析として行われるものとすれば、デザインリサーチでは、現状の視点ではない新たな価値やニーズを満たすというものになります。
そのため、企業の商品やサービスが売れるための調査ではなく、ユーザーのニーズとは何なのか、そもそもどんなことを考えていて、感じていて、そこにはどんな言語化できない悩みや困りごとなどがあり、どんなことが必要となるのか、などについてインタビューなどユーザー起点で情報を収集していくことが主となります。
2. 質的調査が中心となる
ユーザー起点による情報収集は、インタビューやヒアリングが中心となります。そのため、大量の人にアンケートを取って調査結果を数値化し、統計学的に分析していくという定量調査よりも、定性調査(質的調査)に重きが置かれます。
質的調査では、ユーザーからさまざまなことを聞きながら、表情や話し方など言語以外の情報もくみ取っていきます。アンケートを取るなど定量的な調査からはわからなかったことを明らかにします。
ユーザーは企業が本来提供しているのとは異なる商品の使い方をしているのかもしれませんし、そこに対して新たな楽しみ方を見出しているのかもしれません。また、ユーザーが商品に対してどのようなことを感じているのか、どんな感情を周囲と共有しているのかなど、目には見えない商品の価値を読み解いていきます。こうしたことは商品を提供するという立場だけではわからないことが多くあります。
3. 言語化されていないニーズを明らかにする
質的調査によって、ユーザーの情報を収集したら、そこにある言語化されていないニーズを明らかにしていきます。
たとえば、マーケティングリサーチでは、電球という製品を提供している会社において「部屋を明るくしたい」「電球を長持ちさせたい」というニーズを満たすための改善、改良の方法を探ります。
しかし、デザインリサーチでは、スマートフォンの液晶パネルの明るさや色を自由に調整できるLED照明を発明するというような新しいニーズに取り組みます。スマートフォンの見た目の明るさや色を自分で変えられるなんて、実際に出てくるまではほぼ誰もが思いつかないアイデアでしょう。
しかし、いったんそうしたものが現れると、人々は自分でも気づかなかったニーズに気づきます。日中は画面が明るいと見えにくいといった悩みがあったことにも初めて気づくのではないでしょうか。
こうした人々が気づいていない、あるいは言語化されていないニーズを明らかにしていくことで、新たな価値を提供するという目的がデザインリサーチにあります。
デザインリサーチの目的3つ
デザインリサーチの目的として、さらに詳細に分けていくと、次の3つがあります。
- ユーザーの潜在的なニーズ(インサイト)を明らかにする
- インサイトの中から新たな解決策を見出す
- 実践できるアイデアを出す
1. ユーザーの潜在的なニーズ(インサイト)を明らかにする
先述したように、まずはユーザーの潜在的なニーズを明らかにすることです。
たとえば、ユーザーがスマートフォンを使う際に、実は日中に画面を見る際に見えにくくなっていることなどをさまざまな聞き取りから見出していきます。
インサイトとは、直訳で「洞察」「直感」「発見」といった意味があり、マーケティング用語で「潜在的なニーズ」を表します。ユーザー自身も気づいていなかった悩みや課題です。
2. インサイトの中から新たな解決策を見出す
ユーザー自身が気づいていなかった悩みや課題を拾い上げ、それらインサイトの中から新たな解決策を見出していきます。
3. 実践できるアイデアを出す
見出された解決策から実践できるアイデア出しをしながら、実現可能な解決策を探ります。
デザインリサーチのプロセス
デザインリサーチは、次の3つのプロセスを経て行われます。
- リサーチ設計
- 調査
- 分析と機会発見
順に解説していきます。
1. リサーチ設計
まずはリサーチでどんなことを明らかにするのか、明確にする必要があります。ターゲットはどのような人たちで、どういう文脈で、どういう心理について知りたいのかを決めます。
それらを決めていくために、プレリサーチを実施し、前提となる情報を得たうえで、リサーチの方向性を定めていきます。プレリサーチの方法としては、次の3つがあります。
- オートエスノグラフィ
- 二次調査情報調査
- ゼネラルリサーチ
オートエスノグラフィとは、自分で体験した内容を、実地調査の記録や音声、映像などを使いながら文書化する調査方法です。自分が過去に経験したことを文章に書き記していく方法が一般的ですが、記録する際には、事実と解釈を分けて記載することがポイントとなります。
二次調査情報調査とは、同じ内容ですでに調べられた資料がないか調べることです。
ゼネラルリサーチの調査方法は、SNSや口コミ、ブログ、身近な人にインタビューするなどがあります。
2. 調査
次に調査を実施します。調査の方法は、インタビューやワークショップのほか、文献調査などから行われます。代表的な調査手法については、後述します。
3. 分析と機会発見
さらに、調査で明らかになった情報を分析しながら、どうすればユーザーの課題を解決できるのか、具体策としてどんな方法があるのか、その機会を見出していきます。
デザインリサーチの代表的な手法4つ
デザインリサーチの代表的な手法として、次の4つがあります。
- インタビュー
- ワークショップ
- デスクリサーチ(資料・文献調査)
- 観察
順に解説していきます。
1. インタビュー
デザインリサーチの調査手法としてもっとも基本的なものが、インタビューです。インタビューには次の2種類があります。
- デプスインタビュー(一人の人に深く話を聞くもの)
- フォーカスグループインタビュー(複数の人に対して話を聞くもの)
デザインリサーチでは、一般的に前者のデプスインタビューを実施することが多いです。さらにインタビューの種類として、構造化インタビュー・半構造化インタビューの2つに分けられます。
構造化インタビューでは、事前に定められた質問票を用いて、定められたとおりにインタビュー協力者に質問を投げかけます。そして質問への回答を記録します。
この方法では、多くの人にインタビューができるものの、質問票にない質問をすることができないため、インタビューの中に潜在的なニーズにつながるような回答があったとしても深堀することができません。
半構造化インタビューでは、あらかじめ大まかな質問トピックを用意しつつ、インタビュー協力者の回答によっては、その内容をより深く掘り下げてヒアリングします。潜在的なニーズを探るデザインリサーチにおいては、こちらのインタビューを用いることが多いです。
インタビューによって、インタビュアー側からは想定しえなかった回答が得られ、より本質的なニーズを知ることができるからです。ただし、そうした回答が得られるかどうかは、インタビュアーがインタビュー者の話を引き出せるかその力量によって、大きく変わってきます。
インタビューは、インタビュアーの能力が大きく試されるとともに、インタビュー協力者が得られるかどうかも調査結果に大きく変わってきます。
そのため、インタビューに当たって、なぜインタビューをするのか、そのプロジェクトにおいてインタビューは最適なアプローチなのかなどについても問い直す必要があります。また、インタビューがうまくいくかどうかは準備をしっかりできるかで大きく左右します。
準備段階では、いつ、どこで、誰に、何を、どのように聞くのか、インタビューが円滑に進むための手続きをあらかじめおさえておきましょう。当日は、インタビュー対象者の話を中立的な姿勢で、具体的なストーリーを引き出しながら、深みのある内容へと掘り下げて聞いていきます。
2. ワークショップ
ワークショップは複数人が集まって、何かしらの作業をする広い意味合いがありますが、デザインリサーチのワークショップでは、人々を積極的に巻き込み、一緒に考えることを重視しています。そのワークショップは、大きく分けると次の4つがあります。
- プロジェクトの方向性を定めるためのワークショップ
- 機会を発見し、優先順位を付けるためのワークショップ
- アイデア創出や評価のためのワークショップ
- プロトタイプやソリューションの評価のためのワークショップ
どんな課題があるのか、課題を洗い出す、あるいは課題に優先順位を付けて絞り込む、解決策を洗い出す、絞り込んでいくというさまざまなフェーズにおいて、人々と一緒に考えます。ワークショップは、受動的に聞き出すインタビューよりも、より能動的なものと言えます。
3. デスクリサーチ(資料・文献調査)
デスクリサーチは、インターネット上の情報を集めたり、書籍や論文などの資料を活用したりして、情報を整理していくことです。基本的に二次情報を参考にすることになるため、誰が発表した情報であるかを意識する必要があります。
4. 観察
観察は、リサーチ対象となる現場に赴いて、ユーザーが製品をどのように利用しているのか、利用する際にどんな課題やニーズがあるのかを探索することです。現場というのは、ユーザーが製品を使用している場所、その使用状況が見られる場所ということになります。
それらを観察することで、ユーザーから直接語られることのない悩みや困っていることなどを発見することができます。インタビューの手法では得られないニーズを探るのが観察です。
デザインリサーチによって改善につなげている商品・サービス
では、実際にこうしたやや複雑にもみえるデザインリサーチを実施して、生み出された商品やサービスは世の中にあるのでしょうか。
次の6つの企業では、デザインリサーチあるいはUXリサーチを行うことで商品やサービスの開発、改善につなげています。
- 株式会社メルペイ
- Retty(レッティ)株式会社
- 株式会社NTTドコモ
- 株式会社金太郎飴本店
- 葉山シャツ本店株式会社
- ふくろうアイクリニック
順に紹介していきます。
1. 株式会社メルペイ
株式会社メルペイは、フリマアプリの大手であるメルカリのグループ会社で、決済サービスを提供している企業です。
メルペイでは、「maruhadakaPJ(まるはだかプロジェクト)」と題して、「ユーザーのインサイトを丸裸にする」という目的でUXリサーチを実施しました。リサーチは、次の3つのフェーズで行われました。
- リリース初期
- リブランディング後
- 現在進行中
リリース初期においては、初決済を増やすため、ユーザーがどんなモチベーションで、なぜ使ったのか、どんな人たちなのかを知る目的で調査されました。
リブランディング後とは、「メルペイあと払い」という機能を「メルペイスマート払い」という名称にリブランディングした際に、メルペイが「伝えたかったメッセージが適切に伝わっているか」「キャンペーンがどのようにユーザーに受け取られたのか」という効果を検証しました。
ユーザーを深く理解するため、日記調査や訪問調査などのリサーチも組み合わせています。
現在は、継続して使用中のユーザーと離脱したユーザーがおり、それらがなぜ離脱したのか、使い続けているのかを比較、検証しています(2020年4月に発表)。
調査では「ずっと使い続けているユーザーはどういう人なのか」「途中で使うのをやめたユーザーはどういう人なのか」を比較しました。これは、ロイヤリティが高いユーザーを増やすためにはどうすべきなのかをマーケティングやプロダクトへ生かすためです。
「なぜロイヤリティが高くなったのか」「なぜサービスへの愛着がないのか」などについては、デプスインタビューや観察を通して調査しています。
まずはどのような行動をしているのかについて行動ログを解析することで、傾向理解を図るとともにインタビュー対象者の抽出をしました。また、どのような思考をしているのかという問いに対しては、行動ログではわからない思考や認知などをアンケートで取得。ここでもインタビュー対象者を選定しています。
なぜそのような行動や思考に至るのかといった深堀りはデプスインタビューを実施しています。アンケートなどの定量調査とインタビューや観察といった定性調査のそれぞれの特性を生かして、ユーザー理解を深めた調査と言えそうです。
2. Retty株式会社
Retty株式会社は、実名制のグルメサービスサイト「Retty」を展開する企業です。
リサーチでは、そもそもの問いを立てることから始めます。行動ログ分析の結果、「継続ユーザーが増えていない」という課題を発見しました。また、ヘビーユーザーの脱落に課題は見られなかったものの、逆に「ヘビーに利用しているユーザーがなぜ継続しているのか」という問いについても明らかにする必要がありました。
リサーチの設定として
- ヘビーユーザーの継続理由を明らかにする
- ターゲットユーザーと提供価値の方向性を決める
ことを目的とすることにしました。
プレリサーチとしては以下の2つです。
- アンケートによる仮説検証
- プロジェクトメンバー間によるヘビーユーザーが求めるニーズのブレストを行う
仮説検証から得た内容をもとにアンケートの質問項目を作成して、配信。その結果を集計して求める価値ごとに現状のボリュームを把握しました。これらの結果をもとにニーズごとにユーザーを分類(セグメンテーション)しています。
さらにユーザーにインタビューを行い、ユーザーの求める価値を利用するフェーズごとに抽出します。そして、インタビューで取得した定性データをもとにセグメント分析を行いました。
その結果、ライト層のボリュームが一定以上あり、施策によってヘビーユーザーへとグロースできそうなセグメントをターゲットと決めることができました。
ターゲットという言葉はよく使われますが、そもそもどんなターゲットに対してどんな働きかけをすることが有効なのかについて問い直した調査と言えそうです。
3. NTTドコモ
携帯電話などの無線通信サービスを提供する業界大手のNTTドコモでは、位置情報検索サービス「イマドコサーチ」について、新機能の使い勝手や改善点を見つけるためのUXリサーチを行いました。イマドコサーチは、親が子供の居場所を把握するために利用するサービスです。
リサーチでは、対象ユーザーの親側と子ども側において、ユーザビリティテストを実施し、ユーザーがサイトのどの部分でつまずいているのかなどの課題を発見できました。
こちらのリサーチでは、ユーザビリティテストによって観察という手法を用いたことで、インタビューやアンケートでは知ることができない情報を収集しています。
4. 株式会社金太郎飴本店
「どこを切っても金太郎」という言葉でなじみぶかい江戸時代から続く金太郎飴を提供する、株式会社金太郎飴本店では、事業拡大に向けて新たな販路開拓のためにプロダクト開発をすることにしました。
金太郎飴の持つ「昔ながら」「親しみやすい」というイメージにとらわれない新しいプロダクトを生み出そうと、百貨店のハイブランド製品を利用しているユーザーにターゲットを当てて、UXリサーチを実施しました。
その結果、「贈答品やお土産向けの商品」という可能性を発見。こうしたケースにおいてユーザーが求めるポイントとして、「高級感や特別感を演出できるカスタマイズ性」であることが明らかになりました。
リサーチを受けて、結婚式の引き出物などこれまでの金太郎飴が利用されるイメージがあまりないニーズへ対応する商品のプロトタイプを作成。最終的に3種類のプロダクトを開発し、オリジナルデザイン飴のプロダクトは記念品やノベルティ、結婚式のギフトなどでも活用されました。
5. 葉山シャツ本店株式会社
男性用のシャツを提供する葉山シャツ本店株式会社では、ブランドサイトの構築においてUXリサーチを活用しました。
ブランドのターゲットに対し、「なぜこだわりのブランドを選ぶのか」「そこに何を求めているのか」について掘り下げ、メッセージの表現につなげました。リサーチした内容から、コンセプトを設定し、キャッチコピーやメッセージに生かされています。
こうしたコンセプトやこだわりを見てもらったうえで、ECサイトにつなげる導線となっており、シャツを買う以上の思い入れを持ってもらう体験が想定されています。
6. ふくろうアイクリニック
発毛・育毛・薄毛に特化した治療(AGA)を提供する、ふくろうアイクリニックでは事業開発において、UXリサーチを活用しています。
事業開発にあたって、AGAクリニックに対するイメージやターゲットのインサイトを抽出。事業の強みの構築やコンセプト設計にいかすため、市場やユーザーのリサーチを実施しました。
その結果、ユーザーが求めていることとして
- 明朗で安心感のある月額制の料金プラン
- オンライン診療が可能な手軽さ
- 継続のしやすさ
- 治療の全体像のわかりやすさ
などが明らかになりました。これらをサービスに反映しながら事業を形にしていきました。
このほか、サービスサイトの公開、サービス提供開始後も継続的に定量調査と定性調査を行い、UI改善などに取り組み、ユーザーの80%以上から好評価を得ることができました。
ユーザーが何を求めているのか、ユーザー自身も気づいていないニーズをUXリサーチによって把握できるとして、事業開発につなげている事例です。
デザインリサーチを取り入れるには?
デザインリサーチを取り入れることによって、従来のリサーチでは得ることのできなかったそもそもの課題発見や向かうべきターゲットを発見することができます。
ただ、実際にデザインリサーチを社内で行っていくことは可能なのでしょうか。デザインリサーチを自社でも取り入れていく方法として、次の3つが挙げられます。
- デザインリサーチを行っている会社に依頼する
- 社内でできることから小さく始める
- UXデザイナーを配する会社に依頼する
順に解説します。
1. デザインリサーチを行っている制作会社に依頼する
まず、挙げられる方法としては、デザインリサーチを行っている会社に依頼することです。
上記で紹介した、ログ解析ができるユーザビリティテストを実施している企業はあります。UXデザイナーを抱える一定規模の制作会社であれば、何らかのUXリサーチを行うことができるでしょう。
代表的な制作会社について、こちらの記事でも挙げておりますので、実際に確認してみてください。
関連記事:Webデザインに強い企業18選|外注の流れや選ぶポイントも解説!
2. 社内でできることから小さく始める
デザインリサーチを実施した企業事例で紹介したように、デザインリサーチと言っても、これまで多くの企業が行ってきたようなアンケートから始めていくことができます。こうした定量調査をもとに、誰に、何を聞くのかについて項目を絞り、インタビューや観察を実施することができるでしょう。
定量調査と定性調査と組み合わせて効果的な分析をすることで、これまで得られなかった課題を発見したり、ユーザーの潜在的ニーズに気づきを得られたりすることにつながっていきます。
具体的な方法としては、次のようなものがあります。
まずは、課題を発見するプロセスとして次の3点を実施します。
- お客様からのフィードバック・お問い合わせを読む
- お客様からのフィードバック・お問い合わせを分類する
- お客様からのフィードバック・お問い合わせの背景を明らかにする
さらに、次のステップへ進みます。
- 課題を解消する仕組みを考える
- 課題を解消する簡易的な仕組みを作って検証する
- 結果を資料にまとめる
課題を解消する仕組みを考えるには、課題が発生する仕組みを考えます。以下のものを明らかにしていきます。
- 課題の正体
- 課題の発生個所
- 課題の発生によってどのような影響が生じるか など
まずはお客様からのフィードバックや問い合わせを見直していくことが、課題発見へとつながり、改善のための解決策を見出すことにつながっていくでしょう。
3. UXデザイナーを配する会社に依頼する
UXデザイナーを抱える会社は、制作会社だけではありません。デザイナーのエージェントサイトにおいても、UXデザイナーが登録されており、UXデザイナーにつなげることが可能です。
デザイナーのエージェントサイトとしては、レバテック、クラウドテック、日本最大級のデザイナーエージェントサイト、クロスデザイナーがあります。
デザインリサーチを取り入れたUXデザインを依頼するならクロスデザイナーがおすすめ
本記事では、デザインリサーチとはどんな調査で、どのような目的や調査手法があるのかについて解説してきました。また、実際にリサーチを取り入れてサービスの改善やプロダクト開発に生かした企業の事例についても紹介し、自社でもどう取り入れることができるのかを提示してきました。
インタビューや観察といった定性調査とアンケートなどの定量調査を組み合わせて、ユーザーへの理解につなげるデザインリサーチは今後、多くの企業で少しずつ取り入れられていくことでしょう。ユーザーがどのように企業の商品やサービスに触れ、どんなことを感じ、どんな体験をしているのかということを知ることは非常に重要です。
デザインリサーチをすることで、企業の課題やターゲットに気づくことができ、ユーザーの潜在的なニーズを明らかにすることができ、プロダクトの開発・製品の改善などさまざまなことにつなげることができます。
こうしたデザインリサーチを取り入れたUXデザインをご検討であれば、優秀なUXデザイナーを多く抱えるクロスデザイナーがおすすめです。
クロスデザイナーは、審査員通過率5%を突破したデザイナー7,000人以上が登録するエージェントサイトです。
初めてのフリーランスへの依頼でも、エージェントが業務委託方法や連絡方法、契約などをサポートするため、安心して依頼できます。
また採用難易度の高いWebデザイナーに依頼できるため、他者とは差別化したデザインが期待できます。
登録費無料でご相談いただけます。
まずはサービス資料を下記より無料でダウンロードして、貴社のデザイナー採用にお役立てください。
- クロスデザイナーの特徴
- クロスデザイナーに登録しているデザイナー参考例
- 各サービスプラン概要
- 支援実績・お客様の声
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