デザイナーのための発想術:4象限で広がるアイデアの世界 | フリーランスデザイナー・業務委託採用|クロスデザイナー

デザイナーのための発想術:4象限で広がるアイデアの世界

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明日が締め切りなのにアイデアが一個も出ず頭を抱えてる……夢に出てきたら飛び起きてしまいそうなシーンですよね。デザイナーにとって、アイデアが出ないときほど不安な時間はありません。

アイデアは時間をかければ出るものではありません。こうすれば思いつく、という魔法の方法もありません。インプットとアウトプットを繰り返しながらデザインの質を上げていく、地道な努力が一番の近道だと思います。

ただ、近道でもどうせなら効率よく歩きたいですよね。闇雲に進むと、近道のつもりが道に迷って遠回りになってしまうかもしれません。今回は、ぼくがいつも意識しているアイデアの4象限を紹介します。この4象限を使うとアイデアの幅がグンと広がるので、ぜひ試してみてください!

こげちゃ丸

クライアントワークを中心に活動している、描いたり書いたりしているデザイナー。商品デザインからビジネスコンセプトづくりまで、幅広い領域で悪戦苦闘の毎日です。書籍『デザインの言語化』著者(X:@onigiriEdesign

アイデアの組み合わせは遠いほどいい

アイデアはどうやって生まれるのでしょうか? ぼくは、アメリカの実業家、ジェームズ・W・ヤング氏の言葉が一番的を得ていると思います。

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何物でもない」

平易な言葉で言い換えると、アイデアはゼロから生れるものではなく、既にあるコトの組み合わせ方が大事ということです。

組み合わせ方と言われても、ピンとこないですよね。ぼくはアイデアを考えるとき、時間軸とモチーフ軸の2つの距離感を意識するようにしています。

時間軸は、参照したものが新しいほど近く、古いほど遠い。モチーフ軸は、ジャンルが似ているほど近いことを表しています。具体例をあげながら説明していきますね。

組み合わせが近いとパクリになる!?

4象限の左下は、両軸が近いものです。デザインを考えるときに、ここは絶対避けなくてはいけないゾーンです。

△出典:左図はAdobe Fireflyによる生成画像。右は筆者作成

上のサンプルは、左の画像を参考にしながらロゴをデザインしたものです。細かいディテールは違いますが、模倣といわれても仕方がないデザインですよね。RとBというベースにしてる文字の違いはあれど、デザインの構成が酷似しています。

ここまであからさまなデザインをする人はいませんが、近しいことをしている可能性はあると思います。たとえばロゴデザインをするときに、Pinterestで「logo」と検索したことはありませんか? さらに言えば、作りたいロゴの頭文字を加えて「logo A」と入力したことはないでしょうか。

きっとトレンドをおさえた「A」をモチーフにしたロゴが検索結果に並ぶでしょう。これは、似て非なるものをデザインしてしまう危険なアプローチです。

たしかに、短時間でそれなりのクオリティのデザインが完成するかもしれません。でも、そのデザインはオリジナリティがあるとは言えませんよね。しかも、アイデアの源泉を近しい場所に頼っていると、発想力がつきません。アイデアの源泉はなるべく遠いところから参照する。これはどんなデザインをする上でも大事な姿勢だと思います。

アイデアのモチーフは別ジャンルから持ってくる

アイデアを考えるときに一番大事なことは、モチーフをなるべく遠くから持ってくることです。ロゴデザインでいえば、グラフィックとは違うジャンルからインスピレーションを得る、という具合ですね。

店頭で見かけた洋服の色、キレイなカタチの雑貨、ユニークな展示デザインなど、参考になるデザインはたくさんあります。平面ではないモノをグラフィックに落とし込むことは簡単ではありませんが、創意工夫する過程でデザイナーの個性が加わります。同じモチーフでも十人十色のデザインが出てきますし、「その要素をこんな風にアレンジしたんだ!」という驚きが生まれるのです。

逆のパターンもあります。平面の手法を立体に応用するんです。たとえば、平面デザインでよく使われる「一筆書き」をサインに応用したこのデザインは目を引きますよね。

△出典:埼玉県北本市の病院「my CLINIC」のサインもうひとつ有効なのが、自然界から着想することです。

△出典:自然界から着想された照明「Akoya」この照明は、真珠を生み出すアコヤ貝をイメージしてデザインされたそう。光り輝く真珠をライトに見立てた、ユニークで美しい照明です。シンプルな造形から、どうすればアコヤ貝のイメージを照明で表現できるのか、様々なデザインが試行錯誤されたことがうかがえます。

デザインは人工物なので、自然界の要素を取り込むには大胆なアレンジが必要です。でもそれは、オリジナリティを生むチャンスでもあります。アイデアに困ったときは自然界でモチーフを探してみてください。きっといい切り口が見つかるはずです。

過去作品から新しい魅力を見つける

「モチーフはなるべく遠くから」が鉄則ですが、同じジャンルでも過去のデザインにヒントを得て新しい魅力をつくることができます。

たとえば昭和レトロや平成レトロなど、むかし流行ったテイストを再現するのもそのひとつです。世代により「懐かしい」と「新しい」が同居するレトロデザイン。単純に昔のテイストをコピーすればいいわけではありません。大事なのは、いいものはいい! という普遍的なよさを見つけてデザインに取り入れることです。

たとえば、平成初期のファンシーグッズに多用されたポップでカラフルな色使いを、当時なかった3Dアニメの技術で表現したら新しい表現になる気がしませんか?

△出典:Africola同じ分野でも、過去のデザインを現在の技術で再構築すると新しいデザインが生れることがあります。最新のトレンドばかりを追いかけず、過去のいいデザインを振り返る。アイデア発想の大事な心構えです。

日頃の積み重ねが大事な「異分野×過去」

アイデアの4象限、最後は「異分野×過去」です。ここは思い立ってからやることが難しいゾーンです。例えばパッケージデザインの企画会議で、「いまから建築、家具、ポスターの歴史的名作を集めよう!」と言われても困りますよね。

このゾーンのアイデアは、日頃のデザインリサーチの積み重ねがないと難しいです。自分が専門としている分野だけでなく、幅広いジャンルのデザインに触れ、気になったモノをストックしていくことが必要になります。

それを長く続けていくことで、アイデアの引き出しが増えていきます。引き出しがあるからこそ、企画を見た瞬間、「むかし見つけたあの模様を使ってみよう!」と閃くことができるのです。ぼくは、アイデアの質はテーマをもらう前までの準備期間で決まると思っています。

ここにふたりのデザイナーがいます。

A:1000個の引き出しをもってるデザイナー
B:500個しか持ってないけど3日で1000個にしますと宣言したデザイナー

どちらにお願いしたいか、答えは明白ですよね。

ぼくもアイデアを考えるときにPinterestは使いますが、絶対最初に検索はしません。まずは、自分が過去にピンしたストックを見るようにしています。

そして、ロゴマークから空間デザインまで、幅広いジャンルのアイデアストックとデザインテーマを組み合わせていきます。ピンと来ないものもありますが、ときにビックリするほど意外で素敵な組み合わせが見つかるんです。

△出典:筆者Pinterestのボードデザインをストックするときは、しっかり厳選しておきましょう。むやみやたらにストックすると、数だけ増えて質が上がりません。アイデアの源泉が薄まってしまいます。

「異分野に応用できるか」を考えながらストックするのもオススメです。多分野に応用できるアイデアは、トレンドに左右されない普遍的な魅力を持っているものです。

自分の本業と関係ない分野のストックを溜めることは、遠回りでムダなことに見えるかもしれません。でも、5年後、10年後に「続けてよかった!」と必ず思える、アイデアの質を高める方法なので、ぜひトライしてみてください!

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クライアントワークを中心に活動している、描いたり書いたりしているデザイナー。商品デザインからビジネスコンセプトづくりまで、幅広い領域で悪戦苦闘の毎日です。書籍『デザインの言語化』著者。